構成の解説
上卦(Upper trigram)・下卦(Lower trigram)両方とも
「☲ 離(り:Li)」="Radiance":太陽・火・文明・付着する
上下が同じ小成卦(Trigram)の組み合わせで出来ている卦(か=Hexagram)のことを、「重複卦(Duplicate Trigram)」という。
<䷝ 離(り="Radiance")>もそうした「重複卦(Duplicate Trigram)」の一つ。
意味するところは、火がなにかに燃え移ることで存在するように、なにかに親しみつくこと。
文明、すなわち知的で従順な学者肌の徳のイメージがある。
それは、周囲を照らすように、自然に人々を啓蒙するような徳を表す。
イメージとしては、中が空虚で発光する炎。火である。
卦辞(かじ=Explanation of the Hexagram)
「あなたは、正しさを維持することができれば恩恵をうけることができる。思うことは実現するだろう。牝牛の従順さを身に着けていくといい。吉である。」
<䷝ 離(り="Radiance")>は、上卦(Upper trigram)と下卦(Lower trigram)両方とも、同じ小成卦(Trigram)「☲ 離(り:Li)」="Radiance"です。この小成卦(Trigram)は外側は陽、真ん中が陰の形をしていて、炎をイメージします。炎は真ん中は空虚です。
易経の中では、<䷝ 離(り="Radiance")>は並んだ二頭の鹿だと書かれています。
鹿は従順な生き物の象徴です。
日や月は天に従属しているし、穀物や草木は土に従属しています。
どんなものでも自分にふさわしいものに従属しています。
<䷝ 離(り="Radiance")>は正しい従属の仕方が世界を構成することを意味しています。正しい物事や人に従うならば、願いがかなうという意味です。
従順さを象徴する牝牛のようになれば、よき状況が訪れるでしょう。
上卦(Upper trigram)と下卦(Lower trigram)の中心は、中庸でニュートラルでこだわりのない生き方を示しています。
上下の中心に穏やかで従順な「陰」が入っていますので、<䷝ 離(り="Radiance")>が象徴する人間は、「なにかに従属しながらその明晰な叡智を発揮してゆく人」、あるいは「知的な明るさで人々に知恵や知識を与えていく人」です。
また、<䷝ 離(り="Radiance")>が象徴する炎は、必ずなにか燃えつく対象がなければ存在しません。
炎が明るく周囲を照らし出すには、燃えつく対象が適切でなければなりません。
なので、あなたは、自分の能力は正しい相手と目的に対して使うべきです。
あなたの従属する相手が間違っていたら、文明の明るさは発揮できません。
太陽も月も、天に従属するからその真価が発揮できるし、植物は土に従属するからその真価を発揮できるのです。
あなたは仕事でも、パートナーでも、自分の性質に見合った、正しい対象を選んで従事すべきです。
正しい相手に付き従い、牝牛のように、従順な徳を発揮できるならば、思うことは通るでしょう。
その場合は吉となりますよ、というのがこの卦(Hexagram)の判断となります。
◇ひと言アドバイス(象)
人を役職に任命する際には、温情で決めず、能力で決めなさい
<䷝ 離(り="Radiance")>は重複卦(Duplicate Trigram)で、太陽が続けて昇る形です。
賢明なものは、名君や名リーダーのあとに、やはり名君や名リーダーになる資質を持ったものを継がせます。
人事は、個人的な付き合いや感情に影響されやすいものです。
易経はこの卦(Hexagram)のアドバイスとして、人を任命したりする際には、温情で決めず、能力で決めなさい、と言います。
<䷝ 離(り="Radiance")>は暗闇を照らす文明の光ですから、あなたは個人的な付き合いや感情越えて物事を考えていくべきです。
人事のみならず、全般においてそうあるべきだというアドバイスです。
爻辞(こうじ=Explanation of the Lines)
◇1st 陽 初9=First9(初爻:陽位)
「彼は、出世しようとがむしゃらに前へ踏み出そうとする。だが、まだ踏み出せる時期ではない。行動を慎むときは、問題の発生を避けることができるだろう。」
初9(First9)は、「文明」の象徴である<䷝ 離(り="Radiance")>の出発点。
初9(First9)は「陽」で、頭脳明晰で積極的な人を意味します。
「陽」はその性質として上に昇っていくことを志向します。彼も当然、自分を売り出そうとがむしゃらに上へ向けて進み始めます。
しかし、この人の立場は初、まだ日の出の時間帯、まだ駆け出しです。
太陽は、まだ地平線から顔を出したばかり、急には高く昇りません。
なのに、初9(First9)はがむしゃらに踏み出そうとしているのですが、これでは問題が起こってきそうです。
易経は注意を与えます。
あなたはそうした態度、改めて在り方を見直したほうがよいのでは?なんでもただ「がむしゃらに」やればいいってもんじゃないですよ。冷静に行動したほうが問題の発生を回避できますよ。
この爻(Line)を得た場合、がむしゃらで懸命なのはいいのですが、周囲が見えなくなっているかもしれません。
少し冷静になって、状況をよくわきまえてやりましょう。
◇2nd 陰 62(二爻:「中」位置:陰位)
「従順さを持った黄色い太陽が昇った。中庸で人の話をよく聞く賢者が、従順に行動しているから大いに吉である。」
(※二番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。「中庸」を意味する場所。)
黄色は、易経では「正しい従順さ」の象徴です。
黄色い太陽は、知的で、従順なものの象徴。
62は、「陰」が入るべき二番目の「中位」に徳を持った従順な「陰」がいます。
まさに<䷝ 離(り="Radiance")>が本来あるべき姿を体現しています。それは黄色い太陽です。太陽本来の明るさと明晰さで周囲を照らし人々恵みを与えるでしょう。
当然、めでたい状況となるはずです。
が、同時に、正しい従順さがあることはめでたい状況がくるための条件です。
あなたは知的な要素を持っています。が、その上で従順に、慎重に行動してください。そうすれば非常にいい状況が来るでしょう。
◇3rd 陽 93(三爻:陽位)
「太陽が沈んだが、まだ西の空に明るさが残っている。あなたは酒の甕を叩いて、歌い楽しむがよい。そういう心境を持てなければ、あなたはただ虚しく老いるだけで、よくない。」
(※三番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)
93は、太陽が沈む日没の時間帯を象徴します。
また日は昇ってくるでしょうが、今日の太陽は沈みました。
あたりは残照の薄明かりがさしています。
さて、あらゆるものは終わりの時がくるのが真理です。
それをただ嘆いて死を恐れているようでは、嘆きばかりでいい終わりをまっとうできません。
一日の終わりに、酒の入っている甕を叩いて、酒を飲みながら歌い、今ある人生を楽しみましょう。
そういう心境を持てることが、人生の意義を実感させてくれます。
ただ死を恐れ嘆き悲しむところにはいいことなどありません。
「明日は明日の風が吹く」ということ。
今日は、いろいろと不満な結果に終わってしまったかもしれません。
でも、済んだことはもう終わったこと、明日また頑張ればいいではありませんか。
終わったことにくよくよせず、これから先のことを考えなさい、というのがこの爻(こう=Line)の示すところです。
◇4th 陽 94 三爻:陽位)
「そいつが突然やってきて、帝位を簒奪しようとする。受け入れるものはいない。そいつは焼かれて処刑され、打ち棄てられるようなはめに陥るだろう。」
(※四番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。)
四番目の位置は、本来は従順な「陰」が来るべき位置なのに、ここにいる94は「陽」、しかもかなり我が強い人物です。
ちょうど先帝が没したばかり、新しい王朝が幕を開けようとするところ。
ここで94は、まさに自分が帝位を簒奪しようと殴り込みをかけてきます。
しかし、彼の立場は不正でその目的も正しくないから、誰もこれを受け入れるものがいません。
結局、彼はつかまって火あぶりで処刑され、さらに遺体は打ち捨てられるという、無残な結果に陥ります。
あなたがもし、このような簒奪者に該当するならば、この在り方は受け入れられませんので、よくよく考え直したほうがいいでしょう。
あなたがもし簒奪を受ける立場ならば、大いに警戒が必要ですが、しかし簒奪しようと向かってくるものは、大義がなく、人々の支持は集まりません。
要所だけ守っていれば、敵のほうから自滅するでしょうから、心配はいりません。
◇5th 陰 65(五爻:「中」位置:陽位で君位)
「彼は王であるが、力ある家臣たちにいろいろと要求され、苦労は絶えず、涙を流し、状況を憂いてはため息をつく。しかしそうして日々、心配していろいろと考えるからこそ、彼はその地位を維持していけることになる。だから吉なのである。」
(※五番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。「中庸」を意味し、君主を意味する場所。)
五番目の位置は、本来は「陽」が君主としてつく位置ですが、65は力の弱い「陰」です。
95の両側に「陽」がいて、95に対しいろいろと要求し、95を圧迫します。
95はつらい立場にいます。
本来的にミスマッチがあるのですから。
95は毎日涙を流し、憂いてはため息が出ます。
が、しかしそうやって状況をどうするか毎日考えることは、よき治世にもつながり、逆説的に95の地位を安泰にさせることになります。
なので吉と判断が出るわけです。
易経は非常に現実的な人間学を含みます。
私たちは心配事はないに越したことはないと考えがちですが、実はそういう安穏な状況では人は考えず、進歩がありません。
若いうちの苦労は買ってでもしろ、と昔のことわざにもありました。
苦労をしなければ人間には真の進歩がないということをこの卦(Line)は語ります。
◇6th 陽 上9=Upper9(上爻:陰位で無位)
「王が今こそ機会とみて出征する。王は太陽のごとく聡明で明察あるため、悪人たちの首領を成敗し、よろしきことがあるだろう。この王は、悪を倒すために行動している。なので彼が戦争をするとしても問題は起こらないのである。」
(※六番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。属性がない場所。)
上9(Upper9)は<䷝ 離(り="Radiance")>の最終局面です。
これまであなたは基本的に従順でおとなしくしていましたが、自分から打って出ざるを得ない局面になりました。従順であるべき<䷝ 離(り="Radiance")>の状況は終わろうとしていて、ここではあなたは自分が主体となって行動を起こさなければなりません。
劇的な状況の変化が暗示されています。
さて、この爻(Line)の示す物語ですが、王の明察と徳は極点に達し、ここにおいて王は出征します。
王はその聡明さをもって出征するのですから、悪の首領を成敗し、よき成果があるでしょう。
が、ここで易経は、「この戦いは、ただ相手なら誰でも倒せばいい戦いではなく、倒す相手は愚鈍な悪に限られるべきである」と忠告を与えます。
つまり、この戦争は国を乱すものを成敗する戦争です。
あなたが王の立場で、国を正す目的で征伐に出るときは、目的は達せられ、問題はありません。
事業や会社組織の運営においては、あなたは今はおとなしくしている時期ではありません。あなたは事業を推進したり、体制を改めたり、従業員をリストラしたり、積極的に動くべきです。行動した方がめでたい結果となります。
が、しかし、もしあなたが悪意ある「ろくでなし」であるならば、逆に明察ある人物に成敗されます。
この場合は、今の自分の生き方を改めるべきでしょう。
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