大畜(だいちく="Great Accumulating")
⚋ 5th:陰:65
⚋ 4th:陰:64
⚊ 3rd:陽:93
⚊ 2nd:陽:92
⚊ 1st:陽:初9(First9)
※上9(Upper9)、65、64、93、92、初9(First9)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。
大畜(だいちく="Great Accumulating"):大停止、大きな蓄え |
構成の解説
上卦(Upper trigram)
「☶ 艮(ごん:Gen)」="Bound":山・障壁・行き止まり
下卦(Lower trigram)
「☰ 乾(けん:Qian)」="Force":天・始まりのエネルギー・男性原理・積極・能動的
下に純粋な陽のエナジーの塊である「☰ 乾(けん:Qian)」="Force"があって、すさまじい力で上に上がってきている。
この力を、上の「☶ 艮(ごん:Gen)」="Bound"がそれに匹敵する力でおさえてとどめている形。
物事が進展するのをとどめる力が大きく、<䷙ 大畜(だいちく="Great Accumulating")>という。
下卦(Lower trigram)の中心にある「陽」(92)は、上卦(Upper trigram)の中心の「陰」(65)と対応関係にある。
この対応関係は、これも従順な君主が有能な家臣に一任する形。
物事がうまく通る可能性がある。
ある種の帝王学。
個人や組織が、苦労しながら実力をつけていくための条件を示す。
卦辞(かじ=Explanation of the Hexagram)
「王が有能な家臣を抜擢する正しい状況が出現すれば、家臣は恩恵を受ける。彼は自営せず王に仕えて吉となる。大きな冒険をしてみてもいい。」
下にいる有能な家臣を、上にいる名君が受け止めて尊重するのが<䷙ 大畜(だいちく="Great Accumulating")>で、これは大きな力がとどまっていい結果をもたらします。
この卦(Hexagram)の主役は95、優れた王です。
95は「陰」で、中庸を意味する五番目の位置にいます。
五番目の位置は、王の入る位置、本来は「陽」が入るべき位置です。
しかし、王は「陰」ですが、彼は支配者の位置にいて、能力を持った家臣の92に権限を与え、仕事させます。
こうした調整型の王もまた名君なのです。
こうした状況であれば、能力ある家臣は家で自活しているよりも名君のもとで仕事をしたほうがいい結果となります。
「大きなものをとどめる」ということは、謙虚なものの見方が必要です。
95は謙虚で、自分が能力が劣ることを知っています。
なので彼は自分より優れた家臣に権限を与えます。
あなたが責任者の立場なら、95のように謙虚になって、能力がある部下に任せなさい。
あなたが部下の立場なら、あなたに任せてくれる上司がいる会社ならば、就職していいでしょう。
こうした正しい上司と部下の関係があれば、「大きな川を渉る」ような大冒険をしてもいいでしょう。
◇ひと言アドバイス(象)
人の話をたくさん聞いて、自分を高めよう
天に象徴される大きなものを、山の中に蓄えている、というのが<䷙ 大畜(だいちく="Great Accumulating")>のイメージです。
賢者は自分の中に大きな蓄積を持つもの、そのために多くの先例、すなわち人の話を多く聞いて、自分の蓄えとします。
他者の経験は、自分にとっても大切な知識にもなり、実際の状況判断にも役立ちます。
普段から自己主張ばかりしないでよく相手の話を聞きましょう。
そしてあなた自身を高めましょう。
爻辞(こうじ=Explanation of the Lines)
◇1st 陽 初9=First9(初爻:陽位)
「進めば危ういことあってとどめられるので、やめたほうがいい。」
(※一番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)
下卦(Lower trigram)の三つの「陽」は、いずれも外に向かって進んでいこうとする性質を持ちます。
が、初9(First9)はその一番にいます。
彼は下っ端で、力が弱い存在です。
彼は進んでいってもとうてい勝ち目はありません。
あなたは今は進めません。
いいタイミングが来るのを待ちましょう。
◇2nd 陽 92(二爻:「中」位置:陰位)
「車の車軸をくくりつけた革ひもがほどけてしまった。車は進めない。」
(※二番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。「中庸」を意味する場所。)
92は外に向かって進む車です。
が、車軸を車の荷台にくくりつけた革ひも(輹=ふく)がほどけてしまいます。
92は「陽」で、大胆に進もうとする人物。
でも彼は中庸を意味する二番目の位置にいます。
なので彼は無理せず自分から進むのを諦めます。
盲進しないようにすれば、問題は起こらないでしょう。
◇3rd 陽 93(三爻:陽位)
「彼は、良馬に乗って敵を駆逐しようとする。彼は謙虚に自分を反省したほうがいい。彼が日頃から馬車を補佐する衛兵を訓練しているならば、実行して恩恵を受ける。」
(※三番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)
93は「陽」で、行動することを求められる三番目の位置にいます。9彼は性質が剛毅です。中庸ではなく、冷静な判断力がないので前に向かって突進します。
本来は、対応する上6(Upper6)が彼をとどめるべきです。
しかし上6(Upper6)も「陽」ですので、93をとどめず、一緒になって突撃します。
これは良馬に乗って、敵を蹴散らしていくイメージです。
しかし、今は大きな蓄えを作る時期なので、控えめに考えるのが得策です。
まずは馬車に従う衛兵をよく教育するのが先決です。
そのように準備してから打って出るならば、いい状況を得ることができるはずです。
あなたの上司が同意して、打って出る状況になっていますが、今一度用意周到に準備してから事を進めましょう。
◇4th 陰 64(四爻:陰位)
「まだ子牛に角が生えていないうちに、子牛にさやあて(角あて)をはめることで、あなたは子牛から角で突かれることを未然に予防する。大いに吉である。」
(※四番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。)
64、65は、下卦(Lower trigram)を防ぐ側の立場で書かれています。
64に対応して向かってくるのは初9(First9)、一番力は弱く、子牛のイメージです。
子牛はまだ角は生えていませんが、先を見越して今のうちに子牛に角あてをつけてしまえば、角で突かれることを未然に防ぐことができます。
大いにいい結果になるでしょう。
占ってこの爻(Line)が出たならば、なにかトラブルが起こりつつあります。
今のうちに予防してしまいましょう。
そうすれば、問題を未然に防ぐこととなり、大いによろしいでしょう。
◇5th 陰 65(五爻:「中」位置:陽位で君位)
「牙のある猪がいる。あなたは機会をうかがって、猪を去勢してしまうならば、吉である。」
(※五番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。「中庸」を意味し、君主を意味する場所。)
65は君主です。彼は中庸を意味する五番目の位置にいます。
65に対応して向かってくるのは92で、イメージとしては「牙のある猪」です。
92は、初9(First9)が象徴していた子牛よりも力は強く、なかなかとどめられる相手ではなくなっています。
しかも92は「陽」で、いる場所は「陰」が入るべき二番目の位置、不正で敵意ある人物です。
65は機会を見て、猪を去勢しまいます。
猪は去勢されておとなしくなりますので、いい状況になるでしょう。
攻撃的な相手を押しとどめるには、時には政治的な解決策も有効です。
あなたは従わぬ部下に対しては、叱るばかりでなく、彼を昇給させるならば、不満はなくなり扱いやすくなるでしょう。
敵意ある相手に対しては、相手の敵意を去勢してしまいましょう。
統治の心得です。
◇6th 陽 上9=Upper9(上爻:陰位で無位)
「天に浮かぶ、四方に通じる道。あなたは自在にどこにでも行ける。とどめられた力は解放された。思うことは実現する。」
(※六番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。属性がない場所。)
上9(Upper9)は、青空のもと、四方に通じる天の道のイメージです。
上9(Upper9)は「とどめられる」時の終極点を意味し、もはや誰もあなたをとどめません。
下から上がってくる力は解放され、噴水のように一気に広がって空を覆いつくします。
大きく蓄えられた力が一気に解放されました。
あなたはどう行動してもいいでしょう。
思うことは実現します。
事業を成し遂げるタイミングがついに来たのです。
これまであなたが蓄えてきたものすべてを発揮しましょう。
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