⚊ 6th:陽:上9(Upper9)
⚋ 5th:陰:65
⚋ 4th:陰:64
⚊ 3rd:陽:93
⚋ 2nd:陰:62
⚋ 1st:陰:初6(First6)
※上9(Upper9)、65、64、93、62、初6(First6)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。
構成の解説
上卦(Upper trigram)・下卦(Lower trigram)両方とも
「☶ 艮(ごん:Gen)」="Bound":山・障壁・行き止まり
上下が同じ小成卦(Trigram)の組み合わせで出来ている卦(か=Hexagram)のことを、「重複卦(Duplicate Trigram)」という。
<䷳ 艮(ごん="Bound")>もそうした「重複卦(Duplicate Trigram)」の一つ。
<䷳ 艮(ごん="Bound")>が意味するところは、大きな困難に邪魔されて動きが停止してしまった状況。
太陽が上昇していき、究極点に達していて、動きが止まった。
あなたはもうこれ以上は昇れない。
下は崖である。
上下の卦(Trigram)ともに、一番上に「陽」が一つある。
<䷳ 艮(ごん="Bound")>の象徴は山である。
山の頂上にいて孤立するイメージ。
高い能力がありながら一人だけ孤立した状況を意味する。
<䷜ 坎(かん="Gorge")>も困難を意味したが、人間関係のなかでの困難を意味していた。
<䷳ 艮(ごん="Bound")>の場合は、世捨て人的な孤高の状況を意味する。
爻辞(Explanation of the Lines)もそのほとんどがいい要素はでてこない。
易経は、楽観的なことばかり述べて他人を安心させるものではなく、人間に生じうるあらゆる状況を示し、その中でいかに生きるかを示すものである。
だから<䷳ 艮(ごん="Bound")>が示す状況もまた表象として当然含まれる。
<䷳ 艮(ごん="Bound")>は完全な行き止まりを意味し、我々の存在の意味や在り方を考えさせる。
卦辞(かじ=Explanation of the Hexagram)
「その心を背中にとどめて、身体を動かさない。その庭に入っていってもそこにいる人とは会わない、話をしない。そのようであれば問題は生じない」
<䷳ 艮(ごん="Bound")>が示す状況は、意欲や創造性をもった「陽」が上昇していった結果、「陽」はだれもついていけない異次元の境涯にいたり、それゆえに孤立しています。「完全停止」を意味します。
凡人たちは、彼があまりの高みにいるため、彼を理解しません。聖書の「ヨハネによる福音書」で、「光は闇の中で輝いている。闇は光を理解しようとしなかった」とありますが、<䷳ 艮(ごん="Bound")>が示す状況は、まさにそのような状況です。
完全停止の時期ですが、そういうときもあるということ、あなたは止まらざるを得ないときは、とどまるべきで、時機が変わればまた進めばいいのです。
これが世界の真理です。
今のあなたは、誰とも意見は合いません。
この卦(Hexagram)は「対立」も意味しています。
この卦(Hexagram)では、それぞれの対応する爻(Lines)が、すべて「陰」と「陰」、「陽」と「陽」なので和合しません。
こういう時期もあることを認識して、状況に従いなさい、と易経は述べます。
心は、心がとどまるとされる背中にとどめ、行動してはいけません。
「その庭に入る」とは、人と出会う場所に行くこと。
会議やパーティーに参加しても、あなたはしゃべらず、いるかいないかわからぬようにするべきです。
あなたが隠者のようにふるまえば、なにも問題は起こりません。
儒学者たちは、この卦(Hexagram)が老荘思想を反映していると言いますが、あなたは見識が高すぎて今は誰にも理解されず孤立します。
沈黙して時機がくるのを待ちましょう。
そういうときもある、と割り切っていくしかないのですよね。
◇ひと言アドバイス(象)
どっしりと座って動かず、自分の立場を越えることには口出ししない
山が二つかさなったのが<䷳ 艮(ごん="Bound")>です。
山はどっしり座って動きません。
そこで易経は、この状況では、どっしりと座って動かず、あなたの立場を越えることには口出ししないように、と忠告します。
あなたは孤立していて孤高、今は理解者がいない時期ですから、余計なことに口を出せば誤解され、さらに孤立するばかり。
人間界はいいことばかりではありません。
運が悪い時こそ、自分を反省して成長しましょう。
爻辞(こうじ=Explanation of the Lines)
⚋ 5th:陰:65
⚋ 4th:陰:64
⚊ 3rd:陽:93
⚋ 2nd:陰:62
⚋ 1st:陰:初6(First6)
※上9(Upper9)、65、64、93、62、初6(First6)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。
◇1st 陰 初6=First6(初爻:陽位)
「あなたは足首にとどまる。問題はないだろう。冷静な態度で正しい身の処し方をすればいい方向に行くだろう。」
(※一番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)
この卦(Hexagram)は、身体の部処のイメージで各爻(Line)の説明が書かれます。
初6(First6)は、一番下にあるので、足首のイメージです。
一番目の位置は、「陽」が入るべき場所です。
初6(First6)は、本来は動いて上昇を始める立場にあります。
が、初6(First6)は「陰」です。
彼は消極的なので動き出さず止まります。
あなたは孤立していて完全停止した状況にいますから、あなたが止まるのは正しい態度です。
問題の発生を未然に防ぐことができます。
しかし完全停止の状況はまだ始まったばかり。
あなたはこうした態度を続けていけるなら、問題は回避できるのですが、続けられますか?と、易経は警告します。
注意して孤立状況を乗り切りましょう。
◇2nd 陰 62(二爻:「中」位置:陰位)
「彼はそのふくらはぎにとどまる。彼は友が不正であることを諫めて救いたい。だが、そうできずに友に随っている。彼が気持ちがいいわけはない。」
(※二番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。「中庸」を意味する場所。)
二番目の位置は「陰」がはいるべき場所。
62は「陰」で、正しい臣下を意味し、二番目の位置は中庸であることも意味します。
しかしこの場所の象徴はふくらはぎ。
動きが激しい部位のため、周りの動きにほんろうされます。
上に上司にあたる93がいますが、彼は「陽」、彼がいる三番目の位置も「陽」が入るべき場所です。
93はなんでも積極的にやりすぎ、無謀なことでも実行します。
62は93の無謀を忠告してやめさせたいのですが、彼には忠告する力がなく、不本意ながら93に流されて従ってしまいます。
62は正しいことを言えないので、いい気持にはなれません。
しかし、今は完全停止している時期なので、62は黙って93に従うしかありません。
これは人間界ではよくある状況です。
しかし、止むを得ません。
気分は悪くても余計なことを言わないことが、今は大事です。
◇3rd 陽 93(三爻:陽位)
「彼はその腰にとどまる。彼は背筋を引き裂かれる。彼の危うい状況は、まるで心臓を煙でいぶされるようである。」
(※三番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)
93は「陽」、「陽」が入るべき三番目の位置にいます。
彼はなんでも積極的にやりすぎます。
無謀な行動をやめません。
彼は周りをすべて「陰」に囲まれていますが、「陰」は無能な人たちを意味します。
93がなにかをやろうとしても、上司からも部下からも穏便に拒否されます。
彼の様子は、腰の背筋を引き裂かれるようなもの。
非常に危険な状況です。
彼は居場所がなく、まるで心臓を煙でいぶされるような状況です。
改めて、「ひと言アドバイス(象)」を見直してください。
今は、あなたは周りから理解されていません。
なにかを積極的に行おうとすれば、この爻(Line)のようになりますから、行動を控えてください。
◇4th 陰 64(四爻:陰位)
「彼はその胴にとどまる。問題ない。」
(※四番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。)
64が象徴する体の部位は胴、いわば腹です。
胴は心がとどまるべきところです。
64は「陰」、いる場所は四番目、「陰」が入るべきところ。
この状況は、おとなしい人が、おとなしくすべき場所にいますから、正しい状況です。
この爻(Line)は出れば、完全停止している<䷳ 艮(ごん="Bound")>の状況において、あなたはうまく存在感を消しています。
そのようであるならば、何も問題は起こらないのです。
◇5th 陰 65(五爻:「中」位置:陽位で君位)
「あなたはあごの関節にとどまる。発言に気を付けて余計なことをいわなければ、後悔しない。」
65は「陰」、彼がいる場所は五番目、君主の座です。
65は、立場と性質はミスマッチしていますが、中庸です。
これがここではいい方向で作用します。
65が象徴する身体の部位はあごの関節、話す場所です。
65は君主なので、発言しなければなりません。
彼は冷静でニュートラルですから、余計なことは言いません。
なので孤立をさらに深めることはありません。
<䷳ 艮(ごん="Bound")>に象徴される状況では、余計なことを言わないのが重要です。
◇6th 陽 上9=Upper9(上爻:陰位で無位)
「あなたは最後までよくとどまり続けた。良い結果となるだろう。」
上6(Upper9)は、<䷳ 艮(ごん="Bound")>の終極点です。
一番上の位置は、「陰」が入るべき場所。
上6(Upper9)は「陽」、積極的な人間を意味します。
状況はミスマッチに見えますが、彼はおとなしくとどまることに「積極的」なのです。
なので彼はこの卦(Hexagram)の要求に忠実に従っています。
当然、いい結末になるでしょう。
孤立した完全停止の状況もすでに終わりが近づいています。
停止を抜けた先には、いい状況が続いていくと暗示して、<䷳ 艮(ごん="Bound")>は終わります。
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