⚊ 5th:陽:95
⚋ 4th:陰:64
⚋ 3rd:陰:63
⚋ 2nd:陰:62
⚋ 1st:陰:初6(First6)
※上9(Upper9)、95、64、63、62、初6(First6)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。
観("Viewing"): 観察、俯瞰する |
構成の解説
上卦(Upper trigram)は、
「☴ 巽(そん:Xun)」="Ground":風・木・中に入り込む動き
下卦(Lower trigram)は、
「☷ 坤(こん:Kun)」="Field":大地・従順さ・女性原理・消極・受動的
大地の上を、風が吹き抜ける。
この卦(Hexagram)は、下から「陰」がどんどん上へとあがって「陽」を浸食する。
「陰」が上昇するタイプの消息卦(Transition Hexagram)。
通常は正義が邪悪に浸食されるから不吉なのだが、この卦(Hexagram)の場合は櫓の上で君主が閲兵を行っている形。
そこから「観覧」の意味がある。
このタイプのこの卦(Hexagram)としては珍しく、邪悪の伸長は問題にしていない。
観察する、観察される、といった点で様々な視点がこの卦(Hexagram)の中では展開される。
卦辞(かじ=Explanation of the Hexagram)
「神を祀る際には、きれいに手を洗って、軽々しく供物を神に捧げないようにしなさい。そうすれば人々はあなたを信じて、恭しくあなたを仰ぎ見る。」
この卦(Hexagram)は、高い櫓のような形をしています。
君主と上皇が、高い櫓の上で民衆を観る、そして民衆も櫓の上に立つ君主を観る、というイメージ。
櫓の上に立つ二つの「陽(Yang)」たちは、恭しく神の天命に順い、タイミングを観て物事を行います。
下にいる四つの「陰」たちは、民衆を意味します。
君主たちが神を祀る姿を観て、民衆は君主たちに服従します。
※易経では、シンボル記号の形から卦(Hexagram)が説明されることが多い。シンボル記号のほうが易経の本文より古くから存在しているのかもしれない。(筆者注)
下のほうから「陰」がどんどん伸びていく形、あるいは下のほうから「陽」がどんどん伸びていく形をもった卦(Hexagram)のことを、「消息卦(Transition Hexagram)」といいます。
「陽」は正義、道理、善人のイメージ。
「陰」は不義、不正、悪人のイメージ。
通常は「陰」が伸びるタイプの消息卦(Transition Hexagram)は、邪悪が伸びて正義が蝕まれるという不吉な意味合いになります。
ですが、この卦(Hexagram)の場合はこうした点は問題とされていません。
観る、観られるという、人間同士の行動についてこの卦(Hexagram)は論じています。
この卦(Hexagram)では、リーダーがみんなの前で神を祀っています。
リーダーは、神を「仰ぎ観る」態度として、丁寧に手を洗った後で、軽々しく供物を捧げない。
そして儀礼に沿って、厳粛に神への供物を捧げます。
そのように重々しく神を仰ぎ観るのであれば、それは神への誠意を示すことにもなるし、祀りに大義があることが群衆たちにも伝わります。
なので、皆がリーダーを仰ぎ観るようになります。
この卦(Hexagram)では、上の中心となっている95が「陽」、下の中心となっている62が「陰」です。
彼らはそれぞれ正しい位置にいるうえに、「陰」と「陽」で調和します。
なので、この卦(Hexagram)には大義名分があります。
ここでの大義とは、天命に従って物事を行うことをいいます。
世界というのは、すべてが定められたタイミングをもって動いていて、ひとつも狂いはありません。
天命に従っていることをパフォーマンスとして皆に示せば、皆もリーダーを正当な神の代理人として敬い、物事はうまく進みます。
我々が生きる人間界では、結婚式、葬式、法事をはじめ、記念式典、就任のパーティなど、ことあるごとに儀式があります。
こうしたセレモニーでは、主催者は誰が出席しているかを観察することで自分の状況を把握します。
参列する人は、相手がどのように儀礼を進めるかを観察することで相手の器や人間性を判断します。
儀式は、結局は互いに相手を「観る」ことで相手の人格や状況を判断する行為です。
この卦(Hexagram)が出たら、あなたは周囲の人たちから観察されています。
軽々しい言動を慎みましょう。
あなたが誠意があり、大義をもって行動しようとしていることを皆に示せれば、皆の協力を得ることができます。
特に、セレモニーに出席する場合は、周りはあなたの人格を判断しようとしていますから気を付けてください。
セレモニーは表面的には面倒くさいことです。
しかし、うまくあなた自身をアピールできるならば、あなたの利益につながります。
◇ひと言アドバイス(象)
視察をしっかりやろう
この卦(Hexagram)は、大地の上を、風が吹いてどこまでもいきわたるという形をしています。
「観る」ということは、外から観察する中で相手や状況の本質を推察して知り、その上で自分がなにを行うかを考察することです。
この卦(Hexagram)が出たら、いろんな所をくまなく視察なさい、と易経はアドバイスします。
いろんな土地の現状や風俗などを知るためのフィールドワークをしっかりしなさい、という意味です。
たとえばあなたが会社組織で管理職にあるならば、社内をよく観察して廻り、社内の現状を把握すべきです。
現場主義という言葉があります。
組織を改善するには、現場を知らなければなにもできません。
よさそうな計画を立てても、現実に適応しない計画は無意味です。
現状をよく観察しましょう。
プライベートにおいては、いろいろなところを旅行して多くを観察することで、見識を広げましょう。
爻辞(こうじ=Explanation of the Lines)
⚊ 5th:陽:95
⚋ 4th:陰:64
⚋ 3rd:陰:63
⚋ 2nd:陰:62
⚋ 1st:陰:初6(First6)
※上9(Upper9)、95、64、63、62、初6(First6)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。
◇1st 陰 初6(First6)
「彼は、幼児のように離れたところで君主をただ眺めている。彼は視野が狭く、世界を観察しようとする積極さもない。まだ世界を知らぬ駆け出しの愚か者ならばそれでいい。しかし、いい大人がそうであれば恥ずかしい。」
(※一番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)
初6(First6)は、この卦(Hexagram)の出発地点にいます。
本来、出発点にいる人は積極的な好奇心やバイタリティがあるべきです。
ですが、初6(First6)は「陰」で、積極性や活発さはありません。
この卦(Hexagram)の下側に集まった「陰」たちは、上にいる君主を仰ぎ見る群衆です。
初6(First6)は、セレモニー会場の一番後ろにいて、君主がよく見えません。
もっとよく観察しようと前に進めばいいのに、彼は気弱で進めません。
まるで人見知りの強い幼児のような態度で、彼は遠くから君主を眺めるだけ。
もし、あなたがまだ幼く、世間知らずで無知ならば、まだ物事の観察方法を知らないのだから問題ありません。
しかし、あなたがすでにいろいろと社会経験もある大人であるならば、このような態度は恥ずかしいことです。
物事の本質を知りたかったら、一歩前へ出る積極性や勇気が必要です。
◇2nd 陰 62
「あなたは君主を観ようとするが、あまりに君主が神々しいので、あなたは家の門の隙間からのぞき観している。あなたが女性であれば、それもまた悪くない。あなたは家の門の内側にいるようにして、女の正しい道を歩めばいい。(ただし、あなたが大人の男ならば恥じるべきである)」
(※二番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。「中庸」を意味する場所。)
62もまた「陰」で、積極性がありません。
62は君主の輝く姿を観ようとしますが、家の門の隙間からのぞき観ています。
ただし、62は、二番目の位置にいますので、女性のイメージです。
62が女性ならば、謙虚に門の隙間から君主を眺める態度は悪くありません。
62は「陰」、君主は95の位置にいる「陽」、彼らは「陰」と「陽」で調和します。
あなたが女性か男性かで、占いの結果は異なります。
あなたが女性ならば、やや控えめに過ぎますが、あなたのつつましさは悪いものではありません。
あなたは貞節な女性として家庭を維持すればいいでしょう。
あなたが男性ならば、堂々と現実を見ないのだから恥ずかしいことです。
男であるならば、もっと堂々とすべきです。
◇3rd 陰 63
「あなたは、自分の生き方や人生観をよく観察して、進むか退くかを自分で判断しなさい。」
(※三番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)
63は、下卦(Lower trigram)の一番上の位置にいます。
この位置は下卦(Lower trigram)と上卦(Upper trigram)の境界です。
三番目の位置は、実行責任者を意味します。
積極性が求められる位置なので、ここには「陽」が入るのが適切です。
が、63は「陰」です。彼は積極性に欠けています。
63には、対応する上司として上9(Upper9)がいます。
63と上9(Upper9)は、「陰」と「陽」で調和します。
なので上9(Upper9)が、63を誘います。
しかし63は「陰」なのに「陽」がいるべき位置にいるし、上9(Upper9)は「陽」なのに「陰」がいるべき場所にいます。
彼らは両方が正しくはない立場にいます。
進むか、やめておくか、63は、非常に迷う状況にいます。
この爻(Line)が出たら、あなたは自分の生き方や人生観をよく観察して、どうするか決めてください。
易経は良しあしの判断をつけません。
自分自身をよく観察すれば、答えはあなた自身が知っているはずです。
ちなみに、あなたは上9(Upper9)とは運命的な関係があるので、互いに不適切な立場にいても、彼のもとに行くことは道に外れたことでもありません。
◇4th 陰 64
「彼は、威徳ある君主の威光を間近で観ている。彼の立場的にも性格的にもこの君主に仕えることは望ましい。」
(※四番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。)
64は、すぐ上に95と接しています。
これは、彼が優れた君主を間近に見ているイメージです。
彼は観閲式の最前列にいますので、この君主に統治された国の繁栄がよく見えます。
64は「陰」で、忠実で従順な立場を意味する四番目の位置にいます。
95は「陽」なので、彼と64とは「陰」と「陽」で調和します。
彼はこの君主から家臣として起用されるでしょう。
彼は適材適所なので、この君主に仕えることは望ましい結果になります。
あなたが就職などを占ってこの爻(Line)が出れば、採用されるチャンスがあります。
応募先の会社を観察してみて、経営者に徳があり、会社が繁栄しているならば、この会社に就職してよいでしょう。
そうでなければ、考え直しましょう。
◇5th 陽 95
「君主であるあなたが、自分の人生を観察しようとするならば、民の暮らしや風俗が望ましい状況にあるか観察しなさい。民が満足しているならば、あなたは正しいので問題はない。」
(※五番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。「中庸」を意味し、君主を意味する場所。)
95は「陽」で、五番目の君主の位置にいます。
彼は国民に仰ぎ見られる君主です。
下に「陰」である62が、95と対応しています。
62は国民です。
これは95が国民ともうまくいっていることを意味します。
この君主が、自分の生き方が正しいかどうかを判断するにはどうしたらいいでしょうか?
組織のリーダーが正しく生きているかどうかは、部下たちを観察して、彼らが満足しているかどうかで決まります。
もし、部下や従業員が幸せならば、95はリーダーとして正しく生きています。
この爻(Line)が出たら、あなたは自分が率いている組織のスタッフたちが幸せかどうかを観察してください。
リーダーは、自画自賛ばかりでは務まりません。
組織のスタッフを幸せにすることがリーダーの仕事です。
◇6th 陽 上9(Upper9)
「あなたは、地位はないかもしれないけれども、民たちから動向を観察されている。正しい生き方ができるならば問題はないだろう。」
(※六番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。属性がない場所。)
一番上の位置には属性がありません。
上9(Upper9)は、地位やポストがない人物、権威はあるが実権はない相談役のようなイメージです。
地位がないのは気楽のようではありますが、彼は一番上にいます。
彼は櫓の上にいる君主の後ろに立っているような立場なので、かえって目立ちます。
また彼には63との対応関係があり、「陽」である彼と「陰」である63は「陰」と「陽」で調和します。
これは彼が下の者たちから支持されていることを意味しています。
あなたは現在、地位はないかもしれませんが、意外と皆から動向を観察されています。
なのであなたは地位はなくても気楽にはできません。
多くの人があなたを観察していますから、誠実で大義ある生き方を心がけてください。
観る、観られるというのは人間社会にいる以上は、どんな立場にあるとしても、避けることができないことです。
なので社会生活をしていくうえでは、地位がある、ないに関わらず、いつも自分は誰かに、組織に、天に観察されているということを意識して生きましょう。
0 件のコメント :
コメントを投稿