NO.28　大過（たいか＝"Great Exceeding）：危機、非常時の行動

2023-08-19T19:21:00-07:00 2024-04-18T06:20:13Z

⚋ 6th：陰：上6（Upper6）
⚊ 5th：陽：95
⚊ 4th：陽：94
⚊ 3rd：陽：93
⚊ 2nd：陽：92
⚋ 1st：陰：初6（First6）

※上6（Upper6）、95、94、93、92、初6（First6）は、易経における伝統的な各爻（こう＝Line）の表記法である。ここでは漢数字（Chinese numeral）ではなく、アラビア数字にしている。

大過（"Great Exceeding）：危機、非常時の行動

構成の解説

上卦（Upper trigram）は、
「☱　兌（だ:Dui）」＝"exchange"：水が流れ込みたまっている様子、沢・悦び・口

下卦（Lower trigram）は、
「☴　巽（そん:Xun）」＝"Ground"：風・木・中に入り込む動き

下にある「☴　巽（そん:Xun）」＝"Ground"は、従順に相手に入り込む。

上にある「☱　兌（だ:Dui）」＝"exchange"は、「☴　巽（そん:Xun）」＝"Ground"を受け入れて悦ぶ。

なので、この卦（Hexagram）には物事が円滑に展開するイメージがある。

一方、卦（Hexagram）全体としての形は、「陽」が四つ、真ん中に固まっている。

真ん中が重く、それを支える両端がもろい。

今にもすべてが瓦解しそうな状況、危機である。

度が過ぎた状況で、早急な対処が必要。

非常事態をこの卦は意味している。

非常時は、全体をよくするために大いなる思い込みで非常の行動を実行することが許される。

卦辞(かじ=Explanation of the Hexagram)

「家の棟木が、真ん中が太すぎるため重さで下にたわんでいて、折れそうだ。非常事態である。あなたはなにか思い切ったことを実行すればうまくいくし、願うことはかなう。」

卦（Hexagram）の形が、中央に「陽（Yang）」が四つ集まっていて、真ん中が膨らんだ棟木のように見えます。

真ん中が過度に重いため、下にたわんで今にも折れて崩壊しそうな状況です。

非常事態です。

「陽」は、正義を意味していていますが、それが真ん中に四つも「過度に」集中しているのは、大きく度を過ぎています。

また上卦（Upper trigram）が沢で、下卦（Lower trigram）が木を象徴します。

ということは、木が沢の下に沈んでいるので、大洪水であり、非常の時です。

非常時なので、責任者は過度のプレッシャーで今にも卒倒しまいそうな状況です。

しかし卦（Hexagram）としての判断は、意外にめでたいものです。

下にある「☴　巽（そん:Xun）」＝"Ground"は、従順に相手に入り込みます。

上にある「☱　兌（だ:Dui）」＝"exchange"は、「☴　巽（そん:Xun）」＝"Ground"を受け入れて悦びます。

なので、この卦（Hexagram）には物事が円滑に展開するイメージがあるのです。

また、上卦（Upper trigram）と下卦（Lower trigram）のそれぞれの中心が「陽」なので、強い正義があります。

非常事態では、通常は使わない手段を用いることが許される時です。

全体の危機を回避するためには、常識にとらわれぬ大胆な行動をしてもいいのです。

大地震の際には、政府は特別な予算を組むことが許されます。

暴虐な王に多くの国民が苦しめられているならば、国民は革命を起こすことが許されます。

この卦（Hexagram）が出たら、あなたは非常事態に直面しています。

危機を乗り越えるためには、極端な行動に出ても構わないときです。

ただし、あくまでも中庸に、バランス感覚をもって実行してください。

全体の危機を救う、という大義があって初めて、極端な行動は許されます。

極端な行動をとるにしろ、相手の話はよく聞き、相手の意向に応えるように心がけましょう。

そうであるならば、思い切った行動をして構いませんし、すべていい方向に行くでしょう。

そうでなければ、ただでさえあなたは大きな責任に直面していますから、プレッシャーに押しつぶされて自滅することもありえます。要注意です。

◇ひと言アドバイス（象）

危機を回避するために、確固たる信念を持とう

木が沢に飲み込まれるのがこの卦（Hexagram）の形で、つまり洪水が起こっています。

これは非常事態です。

この時期には危機を救うため、あなたは極端な行動が必要です。

やりすぎれば大きな批判も起こってきますから、やりづらいこともたくさんあるはずです。

しかし、非常事態において救済を実行する人は、強い思い込みを持つべきです。

世界を救済する信念だけで行動してください。

批判を恐れてはなりません。

非常事態は一刻の猶予もありませんから、危機を回避する信念をもって迅速に行動すべきです。

失敗を恐れてはなりません。

自分の信念を見極めて、大胆にやりましょう。

爻辞(こうじ＝Explanation of the Lines)

⚋ 6th：陰：上6（Upper6）
⚊ 5th：陽：95
⚊ 4th：陽：94
⚊ 3rd：陽：93
⚊ 2nd：陽：92
⚋ 1st：陰：初6（First6）

※上6（Upper6）、95、94、93、92、初6（First6）は、易経における伝統的な各爻（こう＝Line）の表記法である。ここでは漢数字（Chinese numeral）ではなく、アラビア数字にしている。

◇1st 陰 初6（First6）

「彼は、神へのお供えを捧げるの際に、食器の下に白い茅（ちがや）を敷いてその上に供え物を置くほど、神を畏れ敬う。彼は大丈夫である。」

（※一番目の位置は、「陽（Yang）」が入るべき場所。）

初6（First6）は、下卦（Lower trigram）の主体です。

彼は非常事態の始まりにいます。

彼は「陰」ですので、従順で慎重です。

非常事態に対しても慎重です。

彼は、神を祀るにも、供え物を入れた食器を置く際に、白い茅を敷いてから供え物を捧げます。

非常事態の始まりにおいて、彼は極端に慎重で敬虔です。

こうした極端な慎重さは、非常事態では問題はありません。

この爻（Hexagram）が出た場合、非常事態は始まったばかり、極端なほどの慎重さで危機に臨めば、あなたは大丈夫です。

◇2nd 陽 92

「枯れかけていた柳の木に、新しいひこばえが生えてくる。老いた男が若い妻を得る。大変めでたい。」

（※二番目の位置は、「陰（Yin）」が入るべき場所。「中庸」を意味する場所。）

94は、四つ並ぶ「陽」たち（Yangs）の一番下にいます。

彼は、中庸を表す二番目の位置にいて、バランス感があります。

易経では、時間は卦（Hexagram）の下から上へと展開します。

四つ並ぶ「陽」（Yangs）の中で、92は一番古い「陽」、いわば老いた男性です。

92は95と対応する位置関係にあるのですが、92も95も「陽」で、彼らは調和しません。

92は正妻がいるのですが、彼らは一緒にはなれない状況です。

そこで92は、すぐそばにいる初6（First6）と一緒になります。

彼らは正当な対応関係ではないばかりか、歳の差が過度に離れたカップルです。

しかし彼らは、「陰」と「陽」で調和し、めでたいエナジーが発生します。

枯れかけていた柳の木に、新しいひこばえが生えてくるようなもの。

妻はまだ若く、老いた男に生気を吹き込んでくれるばかりか、子供を産んでくれるでしょう。

あなたがもし老練なベテランであれば、若いパートナーを得るでしょう。

歳の差はかなりあって、あなたたちは周りから驚かれますが、非常にいい結果となるでしょう。

非常事態なので、こうした年の差が許されます。

◇3rd 陽 93

「棟木が重すぎてたわみ、今にも折れそうである。凶。」

（※三番目の位置は、「陽（Yang）」が入るべき場所。）

93は「陽」で、「陽」が入るべき三番目の位置にいます。

彼は正しい位置にいるはずですが、中庸ではなく、バランス感覚がありません。

過度な自信をもっていて、周囲が見えていません。

さて棟木を象徴とするこの卦（Hexagram）において、93は棟木がたわむ箇所を意味します。

彼と対応する位置にいるのは上6（Upper6）ですが、上6（Upper6）は「陰」で、この重さをとても支えきれそうにありません。

このままだと棟木は折れます。

あなたは自信過剰です。

自信過剰で周りが見えないと、あなたは棟木が折れるように自滅しますし、全体も崩壊させてしまいます。

バランス感覚を持ってください。

非常に危険です。

全体が瓦解してしまっては、大変なことになります。

◇4th 陽 94

「棟木の一部が高くそり上がっている。吉である。あなたは下の者からの誘いに乗ってしまうと、バランスが崩れて恥をかくことになる。要注意。」

（※四番目の位置は、「陰（Yin）」が入るべき場所。）

94は、棟木の一部ですが、上にそり上がっています。

棟木はバランスが取れています。

94は「陽」で、本来は「陰」が入るべき四番目の位置にいます。

94の立場は不適切ですが、棟木がバランスをとるためには、一部がそり上がらなければなりません。

非常事態においては、ミスマッチが危機を回避することがあるのです。

94と対応する位置関係にあるのが初6（First6）です。

94と初6（First6）は、「陰」と「陽」で調和します。

なので初6（First6）が94に援助を申し出るのは当然です。

しかし、今は非常事態で、94は不正であるから全体のバランスが保たれています。

正しいバランスを意味する初6（First6）の援助を受けてしまうと、94はバランスを失い崩壊し、全体も崩壊します。

彼は初6（First6）からの援助を受けるべきではありません。

あなたが不適切な立場にいることで、今は全体のバランスがとれています。

今はこの状況を維持してください。

あなたの方針を変えてはなりません。

◇5th 陽 95

「枯れた柳が華を咲かせた。老いたる女が、老いた男を得た。問題も起こらないが、名誉もない。」

（※五番目の位置は、「陽（Yang）」が入るべき場所。「中庸」を意味し、君主を意味する場所。）

95は、君主を意味する五番目の位置にいます。

95は、ここでは老いた女性です。

この女性には正式な対応位置にいる92がいて、92が彼女の夫です。

しかし彼らは両方とも「陽」なので、一緒にいることはできません。

いわば92は彼女の夫ではあるけれども、95とは関係がないようなものです。

そこで、95は近くにいる上6（Upper6）と関係を持ちます。

これは95よりもさらに年老いた男性のイメージです。

老いたる者同士の極端な恋愛です。

イメージとしては、枯れかけた柳の木が、華を咲かせた、というもの。

この花は実を付けません。

花はやがて枯れて、柳も枯れるでしょう。

易経の判断は諧謔的です。

彼らは罪はない。

しかし名誉もない。

彼らが寂しさしのぎでこんな滑稽な関係を持ったとしても、長くは続かないでしょう。

長続きしない者同士が関係をもつのは、枯れた柳に花が咲くようなもの。

その花は枯れるだけの運命、未来にはなにも残りません。

あなたはなにか、もっとほかにすべきこと、考えるべきことがあるはずです。

極端なことを実行するのが許され非常事態ではありますが、あなたは極端の意味を取り違えています。

考え直してください。

◇6th 陰 上6（Upper6）

「彼は、無謀にも川を徒歩で渉ろうとし、溺れてしまった。凶。しかし彼は義理を重んじて行動した。問題はない。」

（※六番目の位置は、「陰（Yin）」が入るべき場所。属性がない場所。）

上6（Upper6）は、＜䷛　大過（たいか＝"Great Exceeding）＞の終極点を意味します。

上6（Upper6）は「陰」で、地位を持ちません。

彼と対応関係にある93が、非常事態に陥っています。

彼は93を救出するために、川を徒歩で渡って93のもとへ行こうとします。

彼に川を渉る能力はありませんから、当然、彼は川に沈んでしまうでしょう。

凶であることは確かです。

易経はここで面白い判断を付け足します。

上6（Upper6）は非常事態において、友を救うため、力がなくても川を渡ろうとした。

彼は大きな災いに遭うが、非常事態では失敗を恐れずに行動することが最も重要だ。

彼は非常事態において正しく行動したのであるから、問題はない。

今は非常事態、あなたの友が救いを求めています。

非常事態を乗り越えるときは、あなたは信念に基づいて行動する必要があります。

あなたは失敗するかもしれません。

しかし、失敗しても後悔しない信念がなければ、非常事態ではなにもできません。

どうするかは、あなたがよく考えて決めればいいでしょう。