⚊ 5th:陽:95
⚊ 4th:陽:94
⚋ 3rd:陰:63
⚊ 2nd:陽:92
⚋ 1st:陰:初6(First6)
※上9(Upper9)、95、94、63、92、初6(First6)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。
訟(しょう="lawsuit"):訴訟、争いごと |
構成の解説
上卦(Upper trigram)
「☰ 乾(けん:Qian)」="Force":天・始まりのエネルギー・男性原理・積極・能動的
下卦(Lower trigram)
「☵ 坎(かん:Kan)」="Gorge":水・雨・雲・泉・危険・落とし穴
上にある「☰ 乾(けん:Qian)」="Force"は、「陽」のエナジーだが、時には押しつけがましい強引さにもなる。
下にある「☵ 坎(かん:Kan)」="Gorge"は、内にこもる性質のため、上から圧迫されて不満を内にため込む。
かくして争いごとが発生する。
<䷅ 訟(しょう="lawsuit")>の卦(Hexagram)を人格として見ると、外に対してはいい人であるが内心にため込む陰険な性格の人物。
こういう性格の人間は争いごとを起こしやすく、トラブルメーカーである。
この卦(Hexagram)は訴訟や対立、反目といった、争いごとを意味する。
争いは人類永遠のテーマである。
卦辞(かじ=Explanation of the Hexagram)
「あなたは公正な言い分をもっているのだが、相手と話は通じず争いになってしまっている。あなたは事態を重く見て、冷静に行動していけば吉となる。相手を打倒しようとすれば凶である。争いを解決するためには、実力者に会って、仲裁を依頼するべきである。こういう時期は大きな冒険はすべきではない。」
<䷅ 訟(しょう="lawsuit")>の主体は、92です。
彼は下卦(Lower trigram)である「☵ 坎(かん:Kan)」="Gorge"の真ん中にはまってしまっています。
彼は落とし穴にはまった状態にいます。
92は「陽」で、二番目の位置にいて中庸です。
上には対応する相手として95がいるのですが、92と95はどちらも「陽」なので争いになります。
こうした状況では、92は事態を軽く考えず、冷静に対応を考えていくしかありません。
争いある時こそ、あなたは冷静に正しく行動すべきです。
そのようにすれば事態はいい方向へ向かいます。
相手を倒して決着をつけよう、などとは思うべきではありません。
なにが正しいかは、時と場合、立場によって違います。
私たちはみながすべてそれぞれの正当性は持っています。
力で相手を打破しようとすれば、その相手は反発します。
事態はますます最悪の方向へ行ってしまいます。
根気よく腹を立てずに争いを処理してください。
争いに際しては、上の立場の人物に仲裁をお願いするのが最も賢明です。
仲裁者を探しましょう。
また、争いごとを抱えていては、あなたは仕事に集中できませんから、冒険はしてはなりません。
訴訟は、基本的には不毛なものです。
決着をつけたとしても、訴訟の費用も掛かりますし、勝ったからといって相手が納得しなければ無意味です。
さらには、相手とは深い怨恨が永遠に残ります。
君子は争いごとはするべきでありません。
争いにならぬように普段から気を付けましょう。
◇ひと言アドバイス(象)
初めの段階で、相手と進む方向が同じかをよく観察しよう
上の「☰ 乾(けん:Qian)」="Force"は天なので昇ろうとしますが、下の「☵ 坎(かん:Kan)」="Gorge"は水なので下へと流れます。
この二者は、進む方向性が永遠に異なります。
訴訟や争いごとは、実は最初の段階で方向性の違いがあるから発生します。
方向性の違いが明らかになって訴訟が起こります。
誰かと何かを始める場合、あなたと相手は進む方向性が同じかをよく見極めてください。
なんとなく相手と利害が一致していても、あなたたちの方向性が違っていたら、あなたたちの協業は続かないのです。
根本的な方向性が違っていれば、あなたがたはいつかは争わなければならなくなってしまうのです。
爻辞(こうじ=Explanation of the Lines)
⚊ 5th:陽:95
⚊ 4th:陽:94
⚋ 3rd:陰:63
⚊ 2nd:陽:92
⚋ 1st:陰:初6(First6)
※上9(Upper9)、95、94、63、92、初6(First6)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。
◇1st 陰 初6(First6)
「彼は、争いを長引かせない。少し言い争っても、あまり言い訳しない。結果的には吉である。」
(※一番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)
初6(First6)は、この卦(Hexagram)では最下位の身分です。
彼は「陰」なので力はありませんが、柔軟です。
彼は争いを長引かせてもいいことはないのを知っていますから、長引かせません。
彼自身の弁解を簡潔に相手に伝えて、争いは終わりにします。
争いごとは長引かせてもいいことは一つもありません。
言い合いになっても、簡潔に素早く弁解して争いを終わらせてしまいましょう。
◇2nd 陽 92
「彼は、訴訟に勝てないので、引き下がって逃亡する。逃亡先は村人が三百戸程度の小さな自領。災いが追ってくることはないだろう。」
(※二番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。「中庸」を意味する場所。)
92は、<䷅ 訟(しょう="lawsuit")>の主体で、二番目の位置にいます。
彼は中庸であり、公正です。
また彼は「陽」で、積極的な性格です。
彼は95に訴訟を起こしています。95は君主です。
95の地位は圧倒的ですし、君主もまた中庸で、公正です。
二人とも正しい言い分をもっており、二人とも「陽」なので互いに相手に譲りません。
二人は和解はできません。
勝ち目がないので92は逃亡します。
彼の逃亡先は、彼自身の領地、三百戸ほどの人口の小さな村です。
この小さな村には、君主は追手は派遣しません。
身分の低い者が身分の高いものを訴えようとしても、災いが降りかかるだけです。
この場合は92は彼自ら災いを招いたのです。
92は、下卦(Lower trigram)である「☵ 坎(かん:Kan)」="Gorge"の真ん中にいます。
つまり彼は落とし穴に落ちています。
彼は状況的に不遇ですが、こういうときは争いを逃れておとなしくするべきです。
運気がよくないときはおとなしくしているのが生き方の原則です
◇3rd 陰 63
「彼は、先祖に王が与えた領地を受け継いだ。立場をわきまえるならば、争いに巻き込まれて危険であっても彼は最後は吉となる。彼は大事な仕事を王から任されそうだ。しかし彼はなにもできないだろう。」
(※三番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)
63は「陰」で凡庸です。
彼は先祖代々与えられている領地を相続して生きています。
彼は自分の力量をわきまえて、分際を越えることをしなければ、争いごとに巻き込まれることもなく、最後まで穏便に過ごせるでしょう。
しかし彼は、上卦(Upper trigram)「☰ 乾(けん:Qian)」="Force"に近い三番目の位置にいますから、王に命じられてなにか投資的な案件に参画させられます。
でも彼が王の命令を受けたら、うまくいくことはないでしょう。
でも、彼は上からの命令には従えばいいです。
人に言われた通りやるのが彼の天命です。
ただし、彼はうまくいかなくても争うべきではありません。
◇4th 陽 94
「彼は争いには勝てない。反省して天命に順い、考え方を改めるべきである。立場をわきまえるならば彼は吉となるだろう。」
(※四番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。)
94は「陽」です。
彼は本来は従順にすべき立場を意味する四番目の位置にいますが、彼は「陽」なので争いを起こします。
しかし、彼は立場上正しくないため、争っても勝てません。
彼は争いを撤回し、自分の立場をわきまえるべきです。
彼自身の立場に従っておとなしくしているならば、彼は吉を得られるでしょう。
立場が正しくないときは争うべきではありません。
◇5th 陽 95
「この王は、訴訟を的確に裁くので、大いに吉である。」
(※五番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。「中庸」を意味し、君主を意味する場所。)
95は「陽」で、公正で公平な判断ができる君主です。
彼は訴訟を裁く人です。
彼は正しく公平な裁きができるので、争う者たちもみんな納得します。
彼は世界を良い方向に導くので、大いに吉となるのです。
◇6th 陽 上9(Upper9)
「彼は、強引に訴訟に勝って、王から帯を賜う。しかし、朝の会議を終えぬうち、三たびこれをはく奪されるような憂き目に遭う。」
(※六番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。属性がない場所。)
上9(Upper9)は、<䷅ 訟(しょう="lawsuit")>の終極点にいます。
争いを徹底的にやってしまった場合です。
上9(Upper9)は一番上の位置にいて、身分がありません。
さらに彼は「陽」です。傲慢不遜です。
彼は争いを好み、徹底的に争って相手を打ち負かし、主張を通して地位を認められました。
帯は彼の任官の印です。
彼は勝ったかのように見えます。
しかし、強引な争いごとで徹底的に争うということは、たとえ彼が勝ったとしても大きな遺恨を残し、政敵も作ります。
政敵たちは恨みを晴らそうと、今度は関係ないところで上9(Upper9)を訴えます。
勝ったはずの上9(Upper9)の立場は二転三転、朝廷での朝の会議が終わるまでに彼の任官の帯は奪われたり取り返したり。
彼は不毛な争いにさらに巻き込まれていきます。
争いごとというのは、訴訟では勝ったとしても、本当に勝ったといえるのでしょうか?
訴訟に勝って栄誉があるのでしょうか?
結局のところ、互いの納得がないところで勝ち負けを付けること自体が不毛です。
それが争いごとの本質であることを示して、<䷅ 訟(しょう="lawsuit")>は終わるのです。
0 件のコメント :
コメントを投稿