⚋ 6th:陰:上6(Upper6)
⚊ 5th:陽:95
⚊ 4th:陽:94
⚊ 3rd:陽:93
⚊ 2nd:陽:92
⚊ 1st:陽:初9(First9)
※上6(Upper6)、95、94、93、92、初9(First9)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。
夬(かい="Displacement"):決着をつける、切り捨てる |
構成の解説
上卦(Upper trigram)「☱ 兌(だ:Dui)」="exchange":水が流れ込みたまっている様子、沢・悦び・口
下卦(Lower trigram)「☰ 乾(けん:Qian)」="Force":天・始まりのエネルギー・男性原理・積極・能動的
下に「☰ 乾(けん:Qian)」="Force"、純粋な陽のエナジーが一気に決着をつけようと昇っていく。
その上にある「☱ 兌(だ:Dui)」="exchange"は悦び。
問題の決着がつくことを喜んで受け入れる形。
下から「陽」が昇っていく形の「消息卦(Transition Hexagram)」で、ここでは「陽」に象徴される正義が、最後に残る邪悪を切り捨てる。
物事は増幅し続けていけば、いつかは堤防決壊のような事態が発生する。
<䷪ 夬(かい="Displacement")>は切り捨てる、ケリをつける、決着をつける、といった意味。
最後のケリをつけるという局面にあたる。
力ではいくらでも決着できるが、決着を付けられる側にも、世論にも納得が必要な時。
物事を決着させるにあたっての考察。
卦辞(かじ=Explanation of the Hexagram)
「あなたが最後に残る悪人を切り捨てるにあたり、まずは王のいる法廷でその罪状をあきらかにする。悪人を切り捨てることの正当性を大声で叫ぶ。それでもこういう場合は危険な状況である。まずはあなたの領地の家臣に理由をよく理解してもらい、自分の足元を固めたうえで決着をつける。あくまでも大義を通すことが先である。最初から武力を行使して決着をつけてはならない。こうした条件を満たせば、懸案のことを実行に移すには好機である。」
下のほうから「陰」がどんどん伸びていく形、あるいは下のほうから「陽」がどんどん伸びていく形をもった卦(Hexagram)のことを、「消息卦(Transition Hexagram)」といいます。
「陽」は正義、道理、善人のイメージ。
「陰」は不義、不正、悪人のイメージ。
ここでは、「陽」が下から五番目の位置まで昇ってきていて、邪悪を意味する「陰」は上にひとつ残るのみとなりました。
正義がここまで制圧してきた以上、最後の邪悪を切り捨てるのは容易そうですが、状況はそう簡単ではありません。
最後に残る「陰」は最も地位が高い者で、権威は下の五つの「陽」よりも上です。
力では圧倒していても、切り捨て方を考えないと、逆に皆の不信を買ったりして窮地に陥る可能性があります。
そこで、手順としては、切り捨てる前に王も同席する法廷でこの悪人の罪状を明らかにし、これを切り捨てる正当性を大声でみなに主張しなければなりません。
また万が一のことに備えて、あなたは領地にいるあなたの家臣たちにはよく事情を説明して理解させ、身の周りを固めておきます。
力では圧倒しているので、こんな面倒なことをせずに一気に武力でケリをつけてもよさそうですが、決着をつけるということは物事のバランスを変えることです。
皆が喜んで同意してくれるような状況を作ってからでなければ、今度は逆に武力をもってなにかを企んでいると疑われ、あなたのほうが窮地に陥る可能性があります。
誰かと決着をつけるような場合、周到な準備が大切なのです。
◇ひと言アドバイス(象)
決着がついた後で皆に恩恵がいきわたるように
天の上に沢があるのがこの卦(Hexagram)の基本表象ですが、これはあと少しで堤が決壊するという状況、一気に問題の決着がつく状況です。
堤が決壊すれば水が下に拡がっていくように、問題が解決した後で皆に恩恵がいきわたるようにしなければなりません。
みなに富を分配することで、最後の邪悪を切り捨てたことにメリットがあることをあなたは示す必要があります。
いくら大義名分があっても、問題解決の後でみなが貧しくなるようならば、問題解決の責任者はその身が危うくなるものです。
なお、そうした富の分配を実行する際は、絶対に恩着せがましくしないこと。
このあたりが実に微妙な気遣いです。
爻辞(こうじ=Explanation of the Lines)
⚋ 6th:陰:上6(Upper6)
⚊ 5th:陽:95
⚊ 4th:陽:94
⚊ 3rd:陽:93
⚊ 2nd:陽:92
⚊ 1st:陽:初9(First9)
※上6(Upper6)、95、94、93、92、初9(First9)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。
◇1st 陽 初9(First9)
「彼は力はないのに攻め込もうと焦る。攻め込んで、もし勝てなければどうしよう、と彼は不安である。」
(※一番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)
初9(First9)は一番下にいて、一番低い身分です。
彼は力がありません。
彼は争いの決着をつけに出発するにあたり、「俺は絶対に勝たねばならない」と緊張しています。
絶対に勝つしかない、などと気負う前に、彼は肩の力を抜いて、事前にあらゆる状況を冷静にシュミレーションし、対策をしっかり立てるべきです。
あなたはいまのままで仕事を進めたら、不吉です。
◇2nd 陽 92
「彼は用心深く、危険があったら皆に知らせる。だから敵が夜襲をかけてきても、彼は恐れることがないし、敗北もしない。」
(※二番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。「中庸」を意味する場所。)
92は「陽」で実力があります。
彼はさらに二番目の位置にいるので中庸です。
用心深く、常に警戒を怠りません。
危険がありそうならば、みなに警戒をするよう彼は呼びかけます。
このようであるならば、夜中に敵の夜襲を受けようと、彼は敗れることはありません。
あなたが争いの決着を付けに行くにあたっては、こうした態度が理想的です。
◇3rd 陽 93
「彼は緊張が顔に出ているので凶である。賢明な者は顔色を変えず冷静に争いを決着させる。彼は一人で悪人のもとに出向いて、仲良くするふりをすべきだ。そして悪人を倒す。彼が悪人と共謀しているのではないかと周りの人たちは疑う。しかし最終的に彼が悪人を倒せば、問題は解決する。」
(※三番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)
93は「陽」で、積極的な性格です。
彼は悪人の討伐を実行する立場にいます。
彼は悪人を討伐しようと意気込んでいますが、緊張が顔に出てしまっています。
それでは相手も構えますから、93は反撃に遭って危ういこととなります。
賢明な者は、争いの決着をつける場合、ポーカーフェイスに徹するべきです。
彼は思惑を顔に出してはいけません。
93は悪人である上6(Upper6)とは友人関係です。
93はこの友人関係を利用し、上6(Upper6)と仲良くするふりをして接近し、彼を倒してしまうのがいいでしょう。
上6(Upper6)と共謀しているのではないかと彼はみんなから疑いをかけられるかもしれません。
でも最終的に問題はないでしょう。
◇4th 陽 94
「尻の皮が剥けて彼は痛くて座れない。彼はなかなか前へは進めない。彼は羊たちの後を歩いて誘導すれば、後悔しない。彼は他の人の意見を信じない。」
(※四番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。)
94は「陽」で、補佐する立場を意味する四番目の位置にいます。
彼は本来、補佐役です。
彼は悪人を打倒するための責任者ではありませんが、彼は責任者として行動したいのです。
しかし、立場的に彼がそうするのは正しくありませんから、彼が進もうとしても周りの人たちに足を引っ張られ、彼は進めません。
羊の群れを移動させるためには、羊たちの後についていけばいいのです。
しかし、94はそうした助言を聞きません。
94が悲惨な結末を迎えても彼自身の責任です。
立場をよくわきまえて、時には人の後について行くことも重要です。
◇5th 陽 95
「彼は親しくしていた悪人をめった打ちにして決着をつける。彼は立場的に正当なので問題はないが、こうするしかないのは残念だ。」
(※五番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。「中庸」を意味し、君主を意味する場所。)
95は、悪人を倒して事態を決着させる実行責任者です。
ただし彼は悪人である上6(Upper6)と親しい関係にあります。
95は「陽」で上6(Upper6)は「陰」です。
彼らは「陰」と「陽」で和合しますから、仲が悪いわけではありません。
95は公正な人物ですから、この親しい悪人を徹底的に打倒して責任を果たします。
95は大義があるからこのように事態を決着させて問題はありません。
ですが、本来ならば彼はもう少し賢く行動して、上6(Upper6)を説得して引退させるべきでした。
この点は残念です。
戦いは最後の手段であり、政治的に決着をつけることが最善と易経は考えます。
◇6th 陰 上6(Upper6)
「彼が助けを求めて叫んでも、誰も味方するものはいない。悲惨な結末を迎える。」
(※六番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。属性がない場所。)
上6(Upper6)は悪人の首領で、君子たちの上に居座っています。
この爻(Line)は、<䷪ 夬(かい="Displacement")>の終極点、最後の決着が付けられます。
占うものが正義の立場ならば、最後に残る悪を倒すのですから、いい意味での決着がつくでしょう。
しかし、占うものが悪人であるならば、弁明の余地なく決着をつけられ、滅亡するでしょう。
普段からの在り方が問われるときです。
が、そこにいたるまで、常日頃、自分の在り方は見直すべきです。
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