⚋ 5th:陰:65
⚋ 4th:陰:64
⚊ 3rd:陽:93
⚋ 2nd:陰:62
⚊ 1st:陽:初9(First9)
※上9(Upper9)、65、64、93、62、初9(First9)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。
賁(ひ="Adorning"):装飾、虚飾、世間体 |
構成の解説
上卦(Upper trigram)は、
「☶ 艮(ごん:Gen)」="Bound":山・障壁・行き止まり
下卦(Lower trigram)は、
「☲ 離(り:Li)」="Radiance":太陽・火・文明・付着する
下にある「☲ 離(り:Li)」="Radiance"は、文明を意味する。
文明は、地上世界の制度やシステム、地上世界や人間界を飾るものである。
上にある「☶ 艮(ごん:Gen)」="Bound"は、停止を意味する。
ここでは、上にとどめられたもの、星座、天の飾りを意味する。
飾りを比喩とし、虚飾や虚構、そして世間体などを考察する卦(Hexagram)である。
卦辞(かじ=Explanation of the Hexagram)
「あなたは外見だけはいいので思うことはうまくいくだろう。少しだけなにかを実行するのであれば。大きなことはするべきではない。」
<䷕ 賁(ひ="Adorning")>は美しい飾りです。
装飾は文化的で、見た目は美しいものです。
だが、美しい形を止めて装飾を作る、というのが飾りの本質なので、発展を止める力が働いてしまいます。
なので小さいことを達成しようとするならば良いのですが、外見だけよくても大きな前進はありません。
大きなことはできないのが装飾の悲哀です。
飾りは、あくまで人工的なものです。
形を固定することで装飾は成り立ちます。
それは子供に行儀作法を繰り返し反復させることで覚えさせるようなものです。
一度、「形式」を覚えれば、あなたは体裁や世間体を獲得することはできます。
うわべの挨拶や外見だけはよい人はたくさんいます。
が、彼らが本当に誠意や実力をもっているかどうかは、別問題です。
実質を伴わない外見の良さは、一番大事な場面では通用しません。
逆に言えば、本当の真心をもった人は、型通りの礼儀作法がなくても、外見がみすぼらしくても、成功するものなのです。
装飾がどんなに美しくても、野に咲く一輪の花の美しさにはかないません。
この卦(Hexagram)が出たら、あなたは礼儀正しく、外見はよく、なんでも無難にできる人です。
小さな事ならばなにをしてもうまくいきます。
しかし、あなたにはまだ本当の実力もなければ、誠意もあやふやで、中身がありませんから、大きなことはまだできません。
自覚して、自分を磨いていきましょう。
◇ひと言アドバイス(象)
できることを少しづつ進めていく
下にある火の明るさが、上にある山にさえぎられて遠くからは見えない、というのがこの卦(Hexagram)が示す状況です。
この時期は知的な明るさをもっていても、山にさえぎられて大きなことができない時期です。
なので、今はあなたができる範囲のことから少しずつ進めていきましょう。
小さい仕事ならば数が多くてもどんどん進めていけばよいでしょう。
でも大きな仕事や、訴訟などの争いごとは、手を出してはなりません。
あなたはまだ外見が良いだけで、実力が伴っていませんから、小さいことを数多くこなしながら本当の実力を身に着けていきましょう。
爻辞(こうじ=Explanation of the Lines)
⚋ 5th:陰:65
⚋ 4th:陰:64
⚊ 3rd:陽:93
⚋ 2nd:陰:62
⚊ 1st:陽:初9(First9)
※上9(Upper9)、65、64、93、62、初9(First9)は、易経における伝統的な各爻(こう=Line)の表記法である。ここでは漢数字(Chinese numeral)ではなく、アラビア数字にしている。
◇1st 陽 初9(First9)
「彼はなにも身を飾るものは持たない。だが彼の足はどんな飾りよりも美しく輝いている。車を捨てて、苦労しても胸を張って堂々と歩いていく。」
(※一番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)
初9(First9)は、この卦(Hexagram)では最下層にいます。
彼は「陽」で、積極的な若者です。
彼は富も地位もありませんが、虚勢は張らずに一歩一歩自分の足で前へ進み、困難や貧しさにも負けずに地道に努力します。
見栄えの良い車を捨てて、あえて徒歩で歩いて苦労する中で、彼は本当の実力を身に着けていきます。
派手な飾りはなにもなくても、一歩一歩歩いていく彼の足先そのものが、どんな飾りにも劣らず尊く光って見えます。
あなたが今、そのようであれば、苦労しただけの結果がついてきます。
◇2nd 陰 62
「あなたは、すぐ上にいる上司に仕えて、上司の口髭のように仕事すると良い。」
(※二番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。「中庸」を意味する場所。)
62は「陰」で、能力はありませんが、中庸でバランス感覚に優れます。
彼の正式な上司は65なのですが、65は彼と同じく「陰」なので一緒に仕事はできません。
そこで彼はすぐ上にいる上司、93に仕えることになります。
93は「陽」で能力も高いうえ、「陰」である62とは「陰」と「陽」で調和します。
彼らが一緒に仕事をすれば、うまくいくでしょう。
そこで、93が顎だとすれば、62は顎を装飾する口髭のようにふるまい、協力し合うといいでしょう。
いい働きができるはずです。
◇3rd 陽 93
「彼は美しい飾りのように、つややかに輝いている。しかし彼の活躍は周りに引き立ててもらっているからであり、彼にはまだ実力はない。もし本当の実力を身に着けていくならば吉となる。」
(※三番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。)
93は「陽」で能力は高く、実務責任者を意味する三番目の位置にいます。
93の上司である64は、93を引き立ててくれますし、93の部下である62は、93の要求通りに仕事をこなします。
なので、上司と部下を意味する二つの「陰」のおかげで93は大きな成果を上げて輝いています。
でも、この状況は幸運なのであり、彼は実力があるわけではなく、彼の活躍は実体がない装飾のようなものです。
彼の本当の上司は上9(Upper9)なのですが、上9(Upper9)は「陽」、93も「陽」なので本当の上司からは相手にされません。
94も62も、彼の本当のパートナーではなく、彼はいつまで彼らと一緒に仕事ができるかわかりません。
そこで易経は助言します。
あなたは、今はたまたま、上司や部下に恵まれて仕事がうまく行き、目立っているけれども、彼らがいなくても実力が発揮できるように、たゆまず努力してみなさい。
そうやっていけば本当の吉となるだろう、と。
装飾品はとかく実体がない虚飾となりがちです。
本当の価値をもって輝けるように努力していきましょう。
◇4th 陰 64
「彼女は、虚飾がなく純粋な女性である。彼女は想う人のところへ白馬に乗って飛んでいこうとするが、間に邪魔する一人の男が現れる。彼は彼女に危害を加える気はなく、彼女と結婚したがっている。」
(※四番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。)
64は「陰」で、ここでは控えめな女性です。
彼女には、運命の相手、初9(First9)がいます。
彼は「陽」で、健全で魅力的な男性ですが、まだ社会的地位はなく、一人で修行しています。
64は一途に彼を慕っています。
彼女は少女のようになんの飾り気もなく、純粋な心を持っていますから、白馬に乗って飛ぶように彼のもとへ向かおうとします。
ところが、身近なところに男性的な剛毅さをもった93がいて、64が初9(First9)と結ばれに行くのを妨害します。
しかし、93は64を害そうとするわけではなく、彼女と結婚したがっているのです。
93は、初9(First9)と違い、社会的地位も能力もありますし、男らしい人物です。
さて、易経は言います。
こういう三角関係が起こるのは、64が正当な相手である初9(First9)と離れていて、対応関係そのものが疑わしく見えるからだ。
しかし、93は64にとっては正式な縁ではない。
彼女は93を受け入れず、純粋な心で初9(First9)を持ち続けるならば、最後はハッピーエンドで初9(First9)と結ばれることになるでしょう。
なんの問題もなくなります、と。
◇5th 陰 65
「彼は、王位にあり大義や誠意はもっているが、質素である。彼の身なりはまるで山の上の畑で身に着ける飾りのように質朴で、神に捧げる布もわずかしか用意できない。彼はみすぼらしく恥をかくが、彼が心から神への誠意をもち、つましくやっているのであれば、おしまいには吉となる。」
(※五番目の位置は、「陽(Yang)」が入るべき場所。「中庸」を意味し、君主を意味する場所。)
65はこの卦(Hexagram)の君主で、中庸の徳があります。
でも彼は「陰」なので力はありません。
彼のイメージは山の畠で身に着ける飾りもののようで、質朴に過ぎます。
彼は神に捧げる布もわずかしか用意できませんので、みずぼらしく恥をかきます。
しかし、65はバランス感覚があり、今の自分の現状にふさわしい儀礼を神に捧げています。
儀礼を飾り立てれば彼の世間体は良くなりますが、一番大事なのは誠意であることを彼は知っています。
彼は、今はみすぼらしくても、心から神を敬っているならば、最後には吉となるでしょう。
「装飾」の本質は世間体ですが、誠意がなければ意味がありません。
この爻(Line)が出たら、世間体よりも真心を大事にしましょう。
実体がない虚栄は不要です。
◇6th 陽 上9(Upper9)
「あなたは一切の装飾をやめて無地に戻るがよい。そうすればなにも問題はない。」
(※六番目の位置は、「陰(Yin)」が入るべき場所。属性がない場所。)
上9(Upper9)は、この卦(Hexagram)の終極点で、装飾が行き過ぎてもはや意味をなさなくなった状況を意味します。
ファッションの流行が行きつくところまで派手になったあげく、無地に戻っていくようなものです。
礼儀作法や世間体も、もし誠実さや実体がなくなって、形式主義になってしまったら、もはや意味はなしません。
装飾は、ある種のマニュアルです。
あなたに本質が伴っていなくても、装飾で小さなことはごまかすことはできますが、本質が伴わなければ、大きなことはできません。
あなたが装飾でごまかせない状況に直面し、行き詰まった場合は、装飾を捨てて、苦労しながら本質を身に着けていくしか解決策はありません。
この爻(Line)が出たら、あなたは無地に戻るべきです。
すべての装飾を取り除いて、なにが大事かを考えなさい。
そうすれば行き詰っていても、やがては問題はなくなるでしょう。
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