易経占いでは、「今は待て!」という結果がよく出る。
こうした場合の考え方を実例を交えて紹介する。
【易経占いケースワーク!2】易経がストップを指示!「時機を待つ」とは?
ストップ!易経占いで、「行動を見合わせるべきである」とする内容が出た場合、どう考えたらいいか? |
易経占いは、あなたが行動の是非を判断する時には大いに役立つ。
あなたがなにか重要な行動を決定しようとするとき、判断に迷うならばぜひ易経で見通しを占ってみてほしい。
結果がいい判断であれば、あなたは自信をもって行動を実行できるだろう。
しかし、易経占いの場合は、行動しようとすることに「警告」が出る場合も多い。
今回のケースワークは、易経から「警告」が出た場合、あなたはどう考えたらいいのか?について見ていこう。
人間世界は、肯定と否定で成り立っている。
私たちは、アイデアを肯定されればいい気分になる。
逆に、アイデアを否定されれば腹が立つものだ。
しかし、私たちの意見やアイデアを否定してくれる人は、重要だ。
私たちはアイデアを否定されることで事前に深い考察を行うことができる。
易経占いも同様だ。
私たちは、行動しようとすることを否定されることで、より慎重に、さまざまなケースを考える機会を得る。
今回も、実際の占いを例にして解説する。
ケース1:仕事ができない部下を解雇したい!
世代が違うと、多くの問題が発生する。
上司は出来が悪い部下が、会社組織にとってマイナスになると判断し、解雇しようとしている。
だが、易経占いの結果は?
クライアントの相談内容
世代が異なる上司と部下。上司は、仕事ができない部下を解雇したい。だが・・・。 |
職場で、出来の悪い部下を抱えていて、彼に対して腹が立ちます。
仕事上のことで私が彼に指示を出しても、彼は「でも」「だって」と言い訳ばかり言って仕事をしないし、注意しても改善しようとしません。
現代は部下に対して少し厳しく言えばパワハラだといわれてしまいます。
なので彼を指導するときは、とても気を使ってきました。
けれども、ほかの社員のモチベーションにも悪影響があります。
この際、この従業員を解雇にしようかと考えます。
私は人事の権限があるマネージャーなので、従業員の解雇を行うことができます。
自分の判断は間違っていないと思いますが、どうでしょうか?
易経占いの結果
占いで出た卦(Hexagram):履(り="Treading")
変爻(Change):5th 陽 95
NO.10 履(り="Treading") |
卦辞(かじ=Explanation of the Hexagram)
「虎の尻尾を足で履んでしまうが、虎はあなたを食らわない。そうであれば思うことうまくいく。」
爻辞(こうじ=Explanation of the Lines)
「彼は思いつめて決断を下す。真面目ではあるが融通が利かぬので危うい。」
一言アドバイス
「自分と相手の立場の違いを理解しよう」
占い結果の分析
経験が豊富な上司から見た場合、新人社員が愚かに見えることはよくある。
今回のケースでは、クライアントは部下の職務能力や態度に疑問を抱いている。
そして、考えた挙句、問題がある部下を解雇しようかと迷っている。
これは特に現代日本ではよくあるケースだ。
相談してきた男性は現在50歳で、厳しい営業の世界で仕事をしてきた。
彼が若かったころは、上司から毎日のように叱責された。
でも、今から30年前は、部下を叱責することは教育の一環だった。
上司からたくさん叱られながら、新人は必死で仕事を覚えた。
そういう経験をしてきたクライアントからすれば、能力がまだともわない若者が、口答えをしたり、言い訳をすることは、耐えられないのだろう。
なので彼は問題が多い新人を解雇しようと考えている。
だが、ちょっと待ってくれ!
易経の判断としては、
「彼は思いつめて決断を下す。真面目ではあるが融通が利かぬので危うい。」
という結果が出ている。
今回の「履(り="Treading")」という卦(Hexagram)は、「目上の人間の逆鱗に触れる」という内容である。
虎の尻尾を「履んでしまった、どうしよう?」という象徴で表現される。
これには意味深長な言葉が続いている。
「虎が尻尾を履んだ人間をかみ殺さなければ幸運である。」
今回は、相談者はいろいろ考えたうえで、「解雇」という決断を下そうとしている。
しかし易経は、こうした決断は立場上は当然であるとしても、危うい、と警告している。
なぜか?
中庸
問題解決の方法は、一つだけではない。選択肢は複数用意すべきである。 |
易経の根底には、中庸という考え方がある。
思いつめたり、選択肢が一つしか見えなくなるということは、易経においては非常に危険な状態に該当する。
どんな方向にでも動ける、水のような柔軟性を中庸だとするならば、選択肢が一つしかないということは、思考が硬直していることを意味する。
また、解雇を実行した場合、いろいろと問題が生じる可能性がある。
会社組織では、上司は部下を指導する義務があるからだ。
今回の場合、クライアントには部下を解雇する権限はある。
しかし、この権限を行使することは、彼が部下の指導を投げ出すことでもある。
彼の上司としての能力に疑問を持たれることにもなりかねない。
易経はここでは、「ほかの選択肢だってあるのかもしれないのに。あなたは、解雇という方法しか見えなくなっているよ。それでいいのかい?」と疑問を投げかけているのである。
クライアントは少し角度を変えて考えてみるべきだろう。
たとえば、
・彼と問題のある部下は、コミュニケーションが良くとれていないのではないか?
・解雇する前に、まだまだいろいろなやり方があるのではないか?
・彼自身がうまく指導できないならば、ほかの人に指導を任せる方法だってあるのでは?
結論的に言うと、彼はもっと柔軟に考えるべきなのだ。
「ひと言アドバイス」にはこうある。
「自分と相手の立場の違いを理解しよう」
クライアントと問題となっている部下は、世代も違うし、価値観も違う。
世代というものは常に入れ替わっていく。
今後の時代は、クライアントのような価値観では若い人たちの支持は得られないかもしれない。
この部下は、間違っていないのかもしれない。
この部下のような価値観のほうが、いずれは主流になっていくかもしれない。
この部下を理解することは、若い世代の顧客をつかむきっかけとなるかもしれない。
占いの結果からすると、相談者は怒りに任せて部下を解雇するべきではない。
今一度、部下と彼自身の立場の違いを考えてみるべきであろう。
このケースは、行動に対する事前警告を易経が出している。
易経占いでは、こうした判断が出ることは少なくない。
こういうケースでは、行動を保留し、改めて再考することが占うものには利益をもたらす。
「虎を怒らせても、虎があなたを食い殺さなければ利益がある。」
クライアントは、相手を食い殺す虎になるべきではない。
食い殺さない方法を考えることが彼の利益につながるのである。
ケース2:どうして私だけが高齢の両親の介護をしなければならないの?すべてイヤになった!
私たちは、思いがけず不本意な状況に巻き込まれることがよくある。
そうした場合、状況から逃亡したくなるものだ。
だが、状況は総合的に考えなければならない。
今度のケースは、高齢の両親を介護しなければならなくなった男性の例を見ていこう。
クライアントの相談内容
高齢の両親の介護は、家族にとっては大きな負担となる。逃げ出してしまいたくもなる。だが・・・。 |
高齢の両親の介護を余儀なくされています。両親二人同時に認知症と老人性うつ病の症状が出ています。
病院に行くにも私が同行しなければなりません。
両親ともにパニック発作を起こすようになっていて、救急搬送もしばしば発生します。
近隣にいる妹は、両親関係の世話をなにもしません。
私は両親の介護をするために妻子と離れて実家で生活しています。
最近、いろいろな面で限界を感じるようになっています。
もう、いっそのことすべてを投げ出してしまおうか、などと思うことがしばしばです。
私だけが、こんなわがままな老人たちの世話を余儀なくされるのはおかしいと思います。
両親を放棄して、実家を離れたい。
どうなのでしょうか?
易経占いの結果
占いで出た卦(Hexagram):需(じゅ="Attending")
変爻(Change):出ていない。
NO.5 需(じゅ="Attending"):待つべくして待つ、躊躇 |
卦辞(かじ=Explanation of the Hexagram)
「誠意と大義をもって待つならば、あなたの願いは大いにかなう。正しく待つことを実行できれば吉である。あなたは大きな川を渉るような冒険を試みてもいい。」
一言アドバイス
「待つ際はリラックスして、英気を養おう」
占い結果の分析
この人は、長男である。
この方の両親はともに80代後半、80歳を越えて以降、認知機能の衰えが顕著となった。
やがて、老人性のうつ病を発症するようになり、朝から「血圧が高い、死ぬかもしれない、大変だ!」とか、「呼吸が苦しい、死ぬかもしれない、病院だ!」などとパニック発作を起こすという。
彼の両親は認識機能や、思考能力が衰え、病院に行っても医師からの診断内容が理解できない。
結局、彼は両親の病院通院に同行せねばならなくなってしまっている。
通常、老人性うつ病や認知機能障害は、夫婦の片方が先に発症することが多い。
その場合は、配偶者が世話をするのが通常だ。
しかし、この人の場合は両親が二人同時にそうなってしまった。
仕事の関係で実家にいた彼が、両親の介護をせざるを得なくなってしまった。
彼の妹は、いろいろと問題がある人物のようで、両親の介護はなにもしないという。
「時期を待つ」という考え方は、東洋哲学の基本である。 |
さて、占いの結果は、「需(じゅ="Attending")」という卦(Hexagram)が出ている。
変爻(Change)は出ていないので、今回の場合は「卦辞(かじ=Explanation of the Hexagram)」と「ひと言アドバイス」から状況を判断する。
結論を先に述べると、クライアントは不本意でも、今は我慢して待つしかないだろう。
この卦(Hexagram)は、「今は動くべき時期でないので、待つべくして待つ」という意味である。
一見、良くない結果のように見えるが、決して悪い意味ではない。
「待つ」ことを、易経では非常に重視する
何事にも、いい時期と悪い時期がある。
船は、追い風がなければ前に進まない。逆風の時は? |
たとえば、あなたが自転車に乗っていると仮定する。
風向きが逆風の時は、あなたは自転車で前に進もうとしても進むことができない。
風向きが追い風の時は、力を使わずとも高速で前に進むことができる。
「需(じゅ="Attending")」という卦(Hexagram)は、「まもなく追い風が来るけれども、今は逆風なので進めない」という状態を意味する。
あなたが自転車に乗っていて逆風の時はどうすべきか?
あなたは速度を落として体力の消耗を防ぐべきだ。
あるいは風向きが追い風になるまでどこかで休憩するべきだ。
これは船の航海でも同じことだ。
逆風の時に船を前進させようとすることは無意味である。
エナジーを消耗するだけだ。
エナジーを消耗しきってしまえば、追い風が来た時に前進できなくなる。
「ひと言アドバイス」には、次のように書かれている。
「待つ際はリラックスして、英気を養おう」
クライアントは、現在の状況を耐えがたいと感じているようだが、今は待つべきだ。
この状況を利用して、相続の問題を整理したり、今後のことを考えたり、いろいろとできることはあるはずだ。
この機会を利用して、将来やらなければならないことを処理してしまったらどうだろう。
今、実家を放棄して逃亡したとしても、処理せねばならぬことがそのままだとしたら、状況的にはまた戻ってこざるを得ない。
逃げても、状況はさらに悪化するのだから。
「待つ」期間は、有効に活用することもできる。エナジーを蓄え、今後の準備をしよう! |
なおこの卦(Hexagram)は、見通し自体は明るい意味を持つ。
今は逆風であるが、やがては追い風が吹くという暗示がある。
クライアントは、今はいいことがなさそうに思えるかもしれない
だが、チャンスは近づいてきており、時期を待ってから行動するならば、彼は大きな成果を得ることができる、と易経は言う。
「卦辞(かじ=Explanation of the Hexagram)」には、次のように書かれている。
「正しく待つことを実行できれば吉である。あなたは大きな川を渉るような冒険を試みてもいい。」
彼がやっていることは、年老いた両親の世話だ。
道義的に見ても正しい。
彼が両親の介護をすることで、彼の妹も彼には頭が上がらなくなる。
相続関連でも、社会的な評価においても、いずれは彼にとって利益となるだろう。
意外かもしれないが、今、彼が我慢することは彼自身の将来にとっても大きな利益をもたらすであろう。
【易経占いケースワーク!2】易経が行動にストップをかける場合は、アイデアを見直すチャンス!時機を待て!
現代社会は、「素早くアイデアを実行する」ことを推奨する。
ビジネスの世界でも、素早い決断が最良とされる。
しかし、すべて素早く行動すればいいとは限らない。
先ほど、逆風と追い風のことを書いたが、私たちの人生にはいい時期と悪い時期がある。
時機が来ない場合は、進もうとしても進めないのが人生だ。
また、あなたがまだ気づいていない問題点があるかもしれない。
基本的に、私たちが行動に迷うのは、どこかに懸念があるからだ。
あらゆる物事は、実行に移す前が肝心である。
事前にあらゆる可能性を検討したうえで実行するならば、どんな結果が発生しても対処することができる。
易経が「待て!」という場合、それは行動を考え直すまたとないチャンスである。
実行に移してしまう前に、改めて考えることは、大きな利益につながる。
大きな成果を上げる人は、概して謙虚であり、他人の意見をよく聞き入れる。
易経占いでは、「実行をストップせよ!」と警告する結果はよく出る。
多くの場合、易経は軽率な行動を戒める。
軽率に行動するよりは、待つほうがいい。
「待つ」ということは、熟慮の時間を与えられることだ。
ここに東洋的な知恵がある。
易経占いは、私たち現代人が効率に目を奪われて見落としがちな「人生の真理」を学ぶ最適のツールなのだ。
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