以前、易経の起源が人類史以前にさかのぼる可能性がある、という記事を掲載した。
こういう話は、「科学」としての実証性は乏しいかもしれないが、無限の想像力をかきたてる。
今回、もう少し突っ込んだ視点で、自由に「仮説」を立ててみたいと思う。
私は科学者ではないので、自由に表現してみたい。
遺伝子と易経の関係は、氷河期と人類の起源に関係する?
易経の64卦は、構造的に遺伝子と同じであるということを多くの人たちが指摘している。
この奇妙な関係については、以前、別の記事で取り上げた。
ワトソンとクリックがこの構造を解明したのは1950年代のことだが、一方で易経の起源は不明で、出どころがどこにあるのかも不明である。
しかし伝説では伏羲や神農といった「人間ではないもの」が関わったとされ、その伝説中において大洪水も関連する。
あくまで伝説の領域に過ぎないとしても、伏羲に関連して出てくる「大洪水」とはなんなのか?
近年、この「大洪水」に関しては地質学などの分野から、新しいことがわかってきているようだ。
氷河期の終わりと大洪水
「大洪水」とは、氷河期が終了して温暖期となり、凍結していた水が溶融して起こる。 |
易経の起源をめぐる伝説は、易経の元となる八卦を作ったのが伏羲であるとする。
この伏羲については、さまざまな伝説の類が存在しているようだが、洪水伝説と結びついた伝承が中国各地に残っているという。
それによると、伏羲と女媧は兄妹である。
彼らの父が封印しておいた雷公(なまず?)を、その子供たちが遊びで解き放ってしまう。
雷公は地殻変動を引き起こし、世界を大混乱に陥れる。
彼らの父は雷公と戦うが、雷公が大洪水を起こしたために、伏羲と女媧を残し世界は滅亡する。
伏羲と女媧は、巨大な瓢箪に乗って洪水を生き延び、夫婦となり現生人類の祖先となる。
そして新しい世界に八卦や、文字や漁業などの様々な文化をもたらした。
こうした「洪水伝説」や「生き残った人々」の話は、世界各地に伝説として語り継がれてきている。
代表的なものとしては、旧約聖書のノアの洪水伝説があるが、聖書よりも期限が古いシュメールのギルガメシュ神話にもあるし、世界各地に似たモチーフの洪水伝説はあるのである。
20世紀末から、この「大洪水」に関する研究は大きく進展してきている。
現在では「大洪水」は実際に発生した出来事である、というのが、統一見解は出てきていないものの、優勢な認識となりつつある。
そしてその原因については、恐るべき事実が今、明らかになろうとしてきている。
温暖化の始まり
地球の温暖化で私たち現生人類は安定して増殖するようになった。 |
みなさんもご存じの「氷河期」という寒冷化した時代は、いつから始まったのかは未だに定かではない。
しかし、わかっているのは、10万年ほど前からだいたい19000年前ころまで地球は長期間にわたり寒冷な状態が続いていた。
これを「オールダードリアス」氷河期という。
北極、南極を中心として水が凍結し、巨大な氷河を形成していた。
当時の東欧、北米、ロシアの大半は、厚さが3キロメートル以上にも及ぶ分厚い氷に覆われて凍結していたことがわかってきている。
だが、中には温暖な地域もあって、特に赤道に沿ったエリアは比較的温暖で豊かであった。
氷河が地上の水の多くを凍らせてしまっているので、海水が少なくなっており、海水面は現在よりも100メートル以上低かった。
そのため、現在は海に沈んでいる多くの土地が陸地であった。
さて、これが19000年ほど前から明らかに温暖化していく。
次第に世界中の氷河が溶融を始め、海水面が上昇し始めた。
それはゆっくりと進行していったものと考えられる。
それ以前から少しずつ温暖化は始まっていたのかもしれない。
原因については科学の世界では未だに不明であるが、少なくとも、二酸化炭素で温室効果が発生したのではないことだけは確かである。
それに伴い、それまで凍結していた土地が次第に解凍されて生き物が住める土地が増えていった。
氷河時代というのは私たち現生人類にとっては非常に過酷な時代で、現代のゲノム解析ではこの時期の現生人類、すなわち私たちの直径祖先は、大幅に数を減らしていたことがわかっている。
一時は一万人を割り込む時期もあったかもしれない、とさえいわれる。
しかし、温暖化が進むにつれて住める環境が増え、私たち現生人類は次第に数を増やしていった。
現在確認されている世界最古の土器が15000年ほど前のものである。(これは、日本の青森県で発掘されている。)
日本では縄文時代と呼ばれる旧石器時代から新石器時代へと続くこの時期は、長い氷河期が終わって人類がようやく繁栄を始めた時期だった。
世界は温暖となり、食料に困らない豊かな時代となったのである。
余談:「地球温暖化」は悪か?
現代はとかく「地球温暖化」を危惧する。
東京などの都市部は確かに夏の気温が高くなっているが、しかしそれが本当に温暖化なのかは一概に言えない。
エアコンの設置量は非常に増えており、排熱によるヒートアイランドの可能性もあることが指摘される。
また、本当に全地球的な温暖化が発生しているとすると、海水面が上昇するはずで、さらに降雨量が増えるため砂漠に雨が降るはずなのだ。
そうなっているであろうか?
地質年代的に考えるならば、温暖化はむしろ生物にとっては寒冷化よりも望ましい。
縄文海進として知られる世界の温暖化のピークは、諸説あるが5000年前頃と推定されている。
ちなみに、温暖なこと自体は決して悪いことではない。
今現在よりも気候が温暖化しても、生物は死滅しない。
・・・しかし、寒冷化で農作物が2年極端な不作となるだけで、人類は壊滅的打撃を受けるのだという。
「人類と気候の10万年史」(中川毅 著 講談社ブルーバックス)
は、こうしたことについて、興味深いことを述べている。
興味ある方はご参照願いたい。
いちおう、言っておくが長期的に見た場合、地球にはむしろ「寒冷化」の兆候が見られる。
ウソではない。
縄文海進のピーク時よりも、海水面は下がってきている。
これは、再び水が凍結を始めてきていることを示している。
また、砂漠化が進行し、アラル海が消失するなど水の循環が次第に滞りつつある。
大気圏の水が氷結し、次第に減少していくと極地には氷床が形成され、陸上では砂漠化が進行してこの現象は起こる。
実際、縄文海進最盛期の6000年前、もっとも温暖で大気圏に大量の水が放出されていた時代のサハラ砂漠は緑の平原だったのだ・・・。これは人工衛星の赤外線写真でサハラ砂漠を撮影すると、多数の川の跡が見られることで明らかである。
実は砂漠化は、温暖化とは真逆の要因でもたらされる現象の可能性が高いというのに、砂漠化を温暖化と結びつける現代科学については、私は科学者ではないが率直に疑問を感じている。
こうした矛盾を、現代の科学者たちの二酸化炭素地球温暖化説は十分に説明しているとは言い難いと思われることを、ここでは余談として付け加えておく。
「ヤンガードリアス」氷河期前後の彗星
彗星の破片などがもたらす流星。こうした隕石や小惑星の地球への衝突が、地質年代を区切るほどの大変動の引き金となってきた。こうした事象は過去に数多く発生してきたと現代では考えられている。洪水伝説には、蛇やナマズ(雷公)などの生物が登場することが多い。奇しくもその形は、・・・彗星と似ている。 |
ところが、氷河期終結後のこうした幸福な状況が12900年前、一変する。
異変が起こり、地球は再び寒冷化してしまった。
原因として注目されているのが、彗星が原因と思しき隕石群の地球への衝突である。
太陽系に侵入して崩壊を始めた彗星があったと考えられている
その破片の軌道が地球の公転軌道に交差した。
これは現在も「しし座流星群」としてその名残をとどめている。
巨大な彗星の破片が流星となり多数地上に降り注いだのだ。
彗星の破片と言っても、直径が数百メートルから数キロに及ぶものがあったと推定されている。
これらが12900年前に陸地と海をターゲットに衝突したらしい。
大規模な火災が発生し、森林の多くが焼けた。
これらが衝突した衝撃で大量の粉塵と水蒸気が大気圏に巻き散らかされ、太陽の光はさえぎられたと考えられている。
シベリアで、凍結状態のマンモスが発見されたりするが、これは突然の寒気と猛吹雪に見舞われて行き倒れてそのまま凍ってしまったのである。
凍結マンモスの胃からは、温帯性の植物が発見され、従来考えられていたようにマンモスが氷河期を好む生物ではなかったことがわかっている。
地球は再び凍り始めた。
後退していたはずの氷河がまた広がり始めた。
この時期を、地球物理学用語では「ヤンガードリアス」氷河期と呼ぶ。
この期間は12900年前から11500年前頃までである。
この期間、地球は再度、凍結を始めた。
人類は、この時期、非常な困難に直面したであろうことは言うまでもない。
この大異変が起こるまで順調に温暖なエリアが広がり続けていたのが、再び氷河期に戻ったのだ。
ところが。
・・・非常に目まぐるしい話であるが、またもその状況が突然終わる。
それは、そのまま氷河期が続いた方が幸せですらあった。
またもや大変動が地球を襲った。
ヤンガードリアス彗星の破片が、再び、今度は15年以上もの長期にわたり、最大規模で地上の氷河地帯を中心に降り注いだためと考えられている。
大洪水、そして
11500年前の大洪水は、氷河の短期間の溶融で引き起こされたと考えられる。それは地表をすべて洗い流し、多くの生物を絶滅に追いやるほどのすさまじい現象だった。 |
11500年前ごろに起こった隕石群の襲来では、北米および欧州北部など氷河におおわれていた北半球の広大なエリアが隕石群のターゲットとなったと推定されている。
破局的な出来事だったらしい。
核兵器をはるかに超える衝撃と熱量が、氷河の上に降り注いだ。
これは、グリーンランドの氷床コア調査などからも明らかになりつつある。
それも十年以上の期間にわたって毎年のように隕石の衝突が氷床で発生したのである。
氷床への隕石衝突は大爆発をもたらしたと推定されている。
高熱で氷河は急速に溶融し、巨大な氷河湖ができては決壊するという破局を繰り返した。
溶融して湖となった氷河が決壊すると、大量の水が津波のような大洪水となってすべてを飲み込んで陸地を襲った。
地表をすべて消し去るほどの大洪水が発生した形跡が北米や北欧に見られる。
さらには水は海に流れ込み、短期間で急激な海面の上昇を引き起こしたと推定されている。
それまで肥沃な低湿地帯だった土地が、海に飲み込まれて次々と姿を消した。
これは、大雨で発生する土石流などといった災害の次元ではない。
巨大隕石の衝突は地殻の活動にも影響を及ぼし、大地震や火山噴火も引き起こした。
北南米ではこのヤンガードリアス氷河期の前後でそれまで生息していた哺乳類の多くが大量絶滅している。
人類も、滅亡の危機に直面したことであろう。
世界に残る様々な洪水伝説は、どうやらこの時期の破滅的洪水の記憶が伝承されてきているのではないか、と言われるようになってきた。
こうしたことをボストン大学のロバート・ショック博士などは比較的早い段階から提唱していたが、それが現在では受け入れられるようになってきている。
ロバート・ショックのこうした学説は、日本でも翻訳されているので、興味ある方は一読してみてほしい。
「神々の声: 失われた文明が予言する地球の未来」(ロバート・ショック著、大地瞬訳 飛鳥新社刊)
旧約聖書にある「ノアの洪水」の話も、伏羲と女媧の洪水伝承も、この頃の壊滅的な洪水の記憶を伝承している可能性があるのである。
この恐ろしい大破局は、それ以前の世界をすべて消してしまった。
しかし、これを機に地球は温暖化が再び始まり、現代につながる新しい世界が出現したのである。
余談:タロットカードの「塔」
タロットカードには、不吉を意味するカードがいくつもある。
中でも最も不吉なものの一つが、「塔」である。
このカードは、流星が空に描かれている場合が多い。(ライダース・ウエイト・スミス版では、稲妻のようなものが塔に直撃しているが。)
流れ星をロマンティックという人もいるが、古来、彗星や流星は、不吉の象徴として認識されていた。
塔のカードは、不測の災難やトラブルを意味する。
塔は破壊され、投げ出された人が転落する象徴は、不吉以外の何事でもない。
実際の話、1994年、シュメーカー・レビ彗星が分裂崩壊し、そのまま木星に激突するという出来事があった。
木星ではその衝撃を受け大赤斑が消えた。
同様の天体事象は過去の地球や火星でも起こったと推定される。
6500万年前の白亜紀の地球を襲った彗星ないしは小惑星衝突が、恐竜を絶滅させたと推定されているが、同様の天体衝突は過去に何度も起こっており、地球の地質年代はそのたびに更新されてきた。
火星でも巨大な天体が衝突した形跡があり、火星の非常に大きな部分では地表が衝撃で吹き飛ばされ、その時の影響なのか火星には磁場が失われている。
こうした天体衝突は現在でも起こりうることは、広く認識されるようになってきている。
それにしても、タロットカードの「塔」のカードは興味深い。
これは、流れ星が世界を滅ぼす可能性も暗示する。
誰がこのような図柄を考えたのか、奇妙である。
現世人類とはなにか?
伏羲と女媧をめぐる伝説は、単に易経の起源という問題のみならず、私たち現生人類の起源という未だ解明されていない問題に対し、様々な想像をかきたてる。
易経の伝説は、その起源が伏羲や、やはり中国の伝説上の神である神農、黄帝などに行きつくのだが、洪水伝承との関連からすると易経の64卦自体が非常に古いものであり、こうした大洪水前後の時代をほのめかしているのが興味深い。
次世代シークエンサーの登場は、遺伝子に記された現生人類の「秘密」を急速に解明しようとしている。 |
私は科学者ではないのだが、人類の起源についてはずっと関心を持っている。
洪水伝説についても昔から非常に関心があった。
私たち現生人類はいったい、何者なのだろうか?という問いかけは面白い。
考古学や科学の分野においては現段階で確実に人類最古の文明の痕跡と認められるのはトルコのギョベックリ・テぺ遺跡の「紀元前9600年前」というあたりが最古である。
それ以前については、なにもわかっていない。
だが、ギョベックリ・テぺ遺跡が紀元前9600年ころに高度な巨石加工文明を持っていたということ自体がこれまでの科学常識では驚異的な話であり、そうなってくるとこれまでは狩猟採集民しかいない新石器時代とされてきた1万年前の世界というものの概念そのものが、大幅に変更されることになってくる。
1万年以前に、こうした巨石文明を構築する人々が存在していた可能性が高まっているのだ。
これまでの歴史がなにがなんだかわからなくなりつつあるのが現代だ。
以前からコリン・ウィルソンやグラハム・ハンコックなどが言っているように、こうした高度な技術や知識を有する文明が突如発生しているように見える、というのは実際におかしな話なのである。
それ以前に遡る文明が存在していたのではないか?とする彼らの疑問は「論理的」には正しいと思われる。
いったい、私たち現生人類にはどんな過去があり、何者なのか?
氷河期と人類とネアンデルタール人、そして遺伝子と易経の謎
氷河期の人類を考えるうえで、同じ時期に生存していたネアンデルタール人の存在を無視することはできない。
しかし、彼らが何者だったのかは、謎に包まれている。
ところが、現代の遺伝子の研究は、私たち現代人の多くがネアンデルタール人の遺伝子を受け継いでいることを解明した。
彼らから受け継いでいるものは、・・・遺伝子だけなのだろうか?
あるいは、・・・文明的な知識も私たちは受け継いでいるのだろうか?
現生人類の素性
十数年前に、ゲノム解析で私たち現生人類の遺伝子には、絶滅した人類であるはずのネアンデルタール人の遺伝子が数パーセント混入していることが明らかになった。
ネイチャーダイジェストの記事のリンクを下に掲載しておこう。
ネイチャーダイジェスト「我々の内なるネアンデルタール人」 |
これは非常にいろいろなことを考えさせられる。
つまり、私たち「現生人類」というのはそういった「純血種」があるわけではないということなのである。
正確に言えば、かつては「現生人類のプロトタイプ」という「純粋種族」が存在していたのは事実だが、実は現在、純粋種はアフリカの一部以外には生存していないということである。
同様に、ネアンデルタール人は絶滅してしまった、とされている。
が、正確に言えば純粋種族としてのネアンデルタール人は滅亡していても、彼ら自体が完全に消えてしまったのではなくて、彼らは「現生人類のプロトタイプ」と交雑し、私たちの一部になっている。
ということは、ネアンデルタール人は私たちの中に生き続けているのだ。
「現生人類」とは、「現生人類のプロトタイプ」のような純血種を意味するのではなく、「現生人類のプロトタイプ」がネアンデルタール人と混じり、他の種族とも混じった結果として現在生存しているということなのだ。(アフリカ南部に現存するネアンデルタール人の遺伝子を持たない人々は現代に保存されている「現生人類のプロトタイプ」といっていい。)
私たちは複雑な交雑の結果、現代まで生き残ることになった新しいタイプの人類だということなのである。
面白いではないか。
ネアンデルタール人
現生人類(左)とネアンデルタール人(右)の頭蓋骨の比較写真(hairymuseummatt - original link archive link, CC 表示-継承 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=6833148による) |
私たちの祖先の一つであるともいえるネアンデルタール人とは、何者であったのか、私たちは多くを知らない。
彼らの脳の容量は現生人類と変わらなかった。
(むしろネアンデルタール人の方がやや脳容積は大きい。)
以前は言語を話さない原人的だと考えられていた時期もあったのだが、最近では驚くほど知的で現代人とほとんど変わらない種族であったことがわかってきている。
保守的なwikipediaにもこのように書かれるようになってきた。
ネアンデルタール人の技術は非常に洗練されていたと考えられている。その中には、ムスティエ文化の石器産業[15] [16]や、火を起こしたり[17] [18]、洞窟の炉床を作ったり[19] [20]、カバノキ属の樹皮から得られたタールの接着剤を作ったり[21]、毛布やポンチョに似た簡単な衣服を作ったり[22]、機織りをしたり[23]、地中海を航海したり[24] [25]、薬草を利用したり[26][27][28]、重傷の治療をしたり[29]、食べ物を保存したり[30]、ロースト、煮沸[31]、燻製などの様々な調理技術を利用したりする能力が含まれている[32]。ネアンデルタール人は、主に有蹄哺乳類を中心[33]に、その他の巨大動物(megafauna)[34][35]、植物[36] [37] [38]、小型哺乳類、鳥類、水生・海洋資源など、多種多様な食料を利用していた[39]。彼らは頂点捕食者であった可能性が高いが、それでもホラアナグマやホラアナライオン、ホラアナハイエナなどの大型捕食者と競合していた。鳥の骨[40][41]や貝殻[42]から作られた可能性のある装飾品、結晶や化石を含む珍しいオブジェクトのコレクション[43]、彫刻[44]、ディヴィジェベイブのフルートによって示された楽曲の作曲、65,000年以前に遡るスペインの洞窟画[45] [46] [47]などの表象的思考や旧石器時代の工芸の多くの例は、決定的ではないがネアンデルタール人に起因すると結論づけられている。宗教的な信念についてもいくつかの主張が行われている[48]。ネアンデルタール人の言語の複雑さは不明であるが、おそらく明瞭に話すことができる可能性があった[49] [50]。
彼らは、現生人類よりも早い時代に世界に拡散していった古い人類種であった。
10万年以前から続いていたとされるオールダードリアス氷河期においては、「プレ現生人類」よりも数も多く、むしろ進んだ文明を持つ「主役」人類だった可能性すら否定できないのである。
実際、ユーラシア大陸の各地で確認されるネアンデルタール人の住んでいた地域では、その後現生人類が都市を築いているケースが非常に多い。
だが、彼らは現代に残る文献記録を残していない。
あるいは残したのかもしれないが少なくとも現代まで伝わっていない。
しかし、である。
現生人類である私たちの非常に多くがネアンデルタール人の遺伝子を持っている(一部、アフリカ南部にはネアンデルタール人の遺伝子を持たない人たちも存在するが)という事実からは、ネアンデルタール人とプレ現生人類は長期にわたり共存していた時代があった、ということである。
そしてその交配は偶然数件起こった、というようなものではなく、長期間にわたり、非常に多くの交配が行われていたことを現代の遺伝子科学による解析は物語っている。
ならば、私たちが現代知っている伝承や言い伝えや神話などのなかに、ネアンデルタール人の痕跡があってもよさそうなものだが、と私は以前からずっと思っていた。
旧約聖書外典「エノク書」
「旧約聖書外典」(関根正夫編 講談社文芸文庫刊) |
「エノク書」とは、初期のユダヤ教、キリスト教では旧約聖書の一部であったが、現在のキリスト教会、すなわちアタナシウス派キリスト教では聖典から除外された古文献の一つである。
初期キリスト教では広く読まれていた形跡があるが、その後は異端視され、焼かれ、近代になってからはほぼその全貌がわからなくなってしまっていた。
ところが、エチオピア正教会ではこれを聖書の一部として今現在も扱っており、19世紀に英国人のジェームズ・ブルースがこれをほぼ完全な形で欧州に持ち帰ったことから、その内容が明らかになった。
その後、死海写本の中に一部エノク書が残存していることも判明した。
また、スラヴ系のキリスト教会の中にも断片的なエノク書が残存していることがわかり、その研究が進んできている。
エノク書が語る、人類の秘密
その内容は、確かに現在のアタナシウス派キリスト教が正典とする聖書の内容とはかなり異なっている。
エノクとは、「カインとアベル」のカインの息子にして、ノアの曽祖父にあたるという。
旧約聖書においては、創世記の主要登場人物であるヨセフですらノアの大洪水からはかなり後の時代の人物であることからすると、啓示文学(予言書)としての旧約聖書に登場する「予言者」の中では最も古い人物ということになるし、また大洪水以前の予言というのもかなり異色である。
エノク書の話の顛末はこうである。
エノク書は、まずは「見張りのもの」と呼ばれる人々が人類の女性と交合し、巨人を生み出し、世界に混乱をもたらした、というショッキングな内容から始まる。
「見張りのもの」は、どうやら人類の監視役をしていた我々とは別種族の人類のようだ。
しかし、人類の娘たちの中に美しい女が生まれてきていることに目をつけた「見張りのもの」たちは、人類の娘たちを妻として性の快楽を貪るようになる。
そして妻たちを通じて、人類に教えることはタブーとされていた天体の運行法則のことや、様々な技術、知識を教えてしまう。
やがて、「見張りのもの」たちと交わった女たちは身ごもり、「巨人」を産む。
巨人たちは貪欲で地上のあらゆる食べ物を食いつくしてしまい、食い足らなければ人類を捕食するようになり、共食いもし、地上は悲惨な殺戮と混乱を迎えることとなる。
この惨状を見た神は、地上に洪水をおこし、「見張りのもの」「巨人」「人類」を一掃することを決定する。
地上と天界の伝達役であったエノクは、「見張りのもの」たちに請われて神に許しを乞う嘆願を行うこととなる。
夢の中で天界とアクセスしたエノクは神のところへ行き、嘆願を伝えるが、神はすでに地上を一掃する計画は変えることはできないし、タブーを犯した者たちは永遠に天界に行くことは許さないという。
エノクはこうした神の決定事項を「見張りのもの」たちに伝達するように命じられる。
また、天使たちに連れられて世界がどうなっているかを見て回り、「世界の秘密」を知ることとなる・・・。
見張りのもの?
「天からの見張りのもの」は、私たちの祖先と交配し、巨人を生み出した、とエノク書には書かれているが・・・ |
この、エノク書で最初から出てくる「天からの見張りのもの」という人々は、「天使」ではない。
「神」でもない。
・・・いったい、何者なのだ?
ここで、「ネアンデルタール人と現生人類との交配」という科学的事実を知ったうえでエノク書を読むと、・・・なんだかエノク書に出てくる、「見張りのもの」が、私にはなぜかネアンデルタール人と重なって見えるようになってきた・・・。
これは、あくまでも私個人の直感に過ぎないかもしれない。
しかし、アフリカの一部の人々を除き、我々現生人類の大半がネアンデルタール人の遺伝子を持っているという事実からすると、この交配は単発的なものではなく、広範で組織的に行われた可能性があることは科学者たちも認めるところである。
なんだか、ここには現生人類をめぐる重大な秘密が隠されているような気がしてならない。
仮に、エノク書の舞台が大洪水以前の時代の話であるとするならば、その時代で主役だったのは・・・我々現生人類ではなくてむしろネアンデルタール人である。
オールダードリアス氷河期の時代がいったいどういう時代だったかが非常にわかりづらいのは、当時の世界が、大洪水により完璧に一掃されてしまっているのが大きな原因だ。
また、その当時人類が住むのに適した土地の多くが、現在では海面の上昇により海に沈んでしまっている。
また氷河で凍結していなかった陸地の多くが流星の衝突による爆発火災とその後の大洪水により根こそぎ洗い流されてしまっているために、証拠となる痕跡がわかりづらくなってしまっている。
しかし、ここで「見張りのもの」=ネアンデルタール人と仮定すると、・・・なんだかいろいろなことに対してつじつまが合うように思われる。
今回、易経の話からはだいぶ脱線して長くなってきてしまっている。
ひとまずこれで区切る。
次回、もう少しこの問題を考えてみたいと思う。
※続きの記事は以下を参照。
【遺伝子分析が語る氷河期の人類の秘密】 |
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