易経占いカウンセリング 2:婚活は続けるべきか?自分らしさへの復帰

自分らしさを失った目標の追求は、無意味だ。
自分らしさを失った目標の追求は、無意味だ。

易経が示す象徴には、意味が分かりづらいものもある。

現代人は、目的をもって結果を出す、という思考に慣れすぎている。

プロスポーツ選手が、子供たちに次のようなことをよく言う。

「夢を持ち続けたから自分はプロのサッカー選手になれた。

みなさんも、夢を持ち続けましょう。」

こうした発言は、非常に浅はかだと思う。

人生はそれほど単純ではないのだ。

今回、私がご紹介するケースは、単純ではない人間世界を考えさせられる。


相談内容

ある女性からの相談である。

「今、36歳です。

結婚したいと数年前から思っています。

もう若くはないですが、子供が欲しいんです。

職場は忙しくて、なかなか男性と知り合う機会もありません。

友人に誰か紹介してほしい、と頼んで紹介された男性と食事をしたこともあります。

でも、なかなか結婚するほどの関係にはなりません。

お見合いもしてみました。

私と同じ世代の人でした。

彼は、私と結婚したいと言いました。

でも、なんだかとても一緒に暮らす気にはなれないような男性です。

なんだか疲れてきました。

もう、独身でいいのではないかと思います。

結婚相手を探すことを続けるべきでしょうか?」

結婚適齢期を過ぎてからの婚活。なかなか難しいケースが多い。
結婚適齢期を過ぎてからの婚活。なかなか難しいケースが多い。

こういう相談は、意外と現代日本では多い。

この女性は、容貌は悪くない。

頭もいい。

仕事もできる。

なのに、結婚していない。

本人は結婚できるならば結婚したいと思っている。

しかし、なかなか縁がない。

ちなみに、この女性の場合は父親が亡くなり、母親と二人残された。

現在、彼女は職場の近くにアパート暮らしである。

母は実家にいるが、少し遠いので月に二回ほど実家に戻る。

母親の世話をする人間は彼女しかいない。

意外とこういう女性は多い。

日本は、昔は本人の意思とは無関係で縁談を周囲が持ってきた。

50年ほど前までは日本では見合い結婚が圧倒的に多かった。

いつごろからかわからないが、日本社会の価値観が変わった。

男と女の自由意思で結婚するのが現代ではスタンダードな価値観だ。

それに伴い、結婚しない男女が増えた。

状況は年々深刻だ。

日本の経済状況が良くないことも原因だ。

結婚しても子供を育てる経済的余裕がない人が多い。

いや、子供を育てるのは大変だが、子供が産まれたらなんとかなっていく場合も多い。

しかし大変なことはしたくない、という考え方が多くなってきている。

最近では結婚そのものが面倒くさいことだと考える風潮が強い。

最近の統計では、今の二十代の若者は、結婚したいと思わない人の割合が過半数だ。

結婚する人が減っているので子供の数も減っている。

日本の出生数は減り続けている。

そのうち日本人は消滅するのではないか?


易経占いを行う!

さて、彼女に易経占いを行う。

私は、クライアント自身にコインを放らせる。

伝統的な日本の易経占いは、クライアントの話を聞いて、占い師が筮竹を用いて占う方式だった。

だが、台湾の道教寺院ではクライアント自身が貝を投げたりして結果を出す方式が多い。

私はそうした占いを見ていて、クライアントにコインを放らせるようになった。

クライアント本人が結果を出す場合、占いの的中率は高い。

ほぼすべてが的中するといってよい。

今回、彼女が出した結果は、次のようなものだった。

无妄(むぼう="Without Embroiling")は、迷いを捨てて、自分本来の道に復帰すること。
无妄(むぼう="Without Embroiling")は、迷いを捨てて、自分本来の道に復帰すること。

NO.25 无妄(むぼう="Without Embroiling")

⚊ 6th:陽:上9(Upper9)
⚊ 5th:陽:95
⚊ 4th:陽:94
⚋ 3rd:陰:63
⚋ 2nd:陰:62
⚊ 1st:陽:初9(First9)

※変爻(Change)は出ていない。


みなさんは、このブログを使い、この卦(Hexagram)を読み解くことができる。

今回の場合は変爻(Change)は出ていない。

卦辞(かじ=Explanation of the Hexagram)とひと言アドバイスを基に判断をしていけばよい。

まずはあなたが占い師になったつもりで、どう解釈するかを考えてみてください。



望外の福?宿命?

この卦(Hexagram)は、現代人には非常にわかりづらい。

簡単に言うと、野望を諦めることで幸運な状況になる、という意味である。

なぜ現代人にとって難解なのか?

現代人は目的を設定し、追い求めるという価値観で生きている。

この卦(Hexagram)の場合は、目的を追うことを諦めなさい、と言っている。

現代的な価値観とは真逆である。

卦辞(かじ=Explanation of the Hexagram)には、次のように書かれている。

「あなたの願いは大いにかなう。従順に一歩退くならばいい状況がくる。退かなければ逆に災いがある。進もうとすれば不利となる。」

目標を追求するということは、目標の設定が正しくなければならない。

プロ野球選手が、子供たちに「夢を追い続けるのが大事だ。諦めるな。」とアドバイスする。

目標に向かって努力することは大切だ。

しかし、人間には個性というものがある。

たとえば、夢があれば誰でもプロ野球選手になれるだろうか?

身体的に高い能力を持って生まれてこなければ、まずはプロ野球選手になるのは難しい。

さらにそれだけではない。

あなたは努力をして、プロ野球の球団からドラフト指名される必要がある。

高校や大学における野球の大会で活躍したとしても、プロ野球選手になれるとは限らない。

怪我をして体を壊し、プロ野球選手になれなかった人は非常に多い。

たとえば、私が幼少期から野球をやっていたとして、プロ野球選手になれたとは思えない。

目標設定が不適切な場合、目標を追い続けてもいいことにはならない。

この卦(Hexagram)は、基本的には現在の目標が間違っている、ということを示している。

それに気づいて、正しい目標設定に修正するならば、運が開けるという意味なのだ。

この卦(Hexagram)の古代中国語としての意味は、「妄想がなくなる」、「正しい軌道に復帰する」といった意味である。

<䷘ 无妄(むぼう="Without Embroiling")>とは、状況に逆らわない、という意味です。

「誠実であること」という意味ではありません。

他に選択肢がない状況を意味します。

ですが、やむを得ない選択が、幸運につながります。

一歩退くことで、争いや困難が解決することを意味しています。


このクライアントの場合

この女性は、切実に結婚したいと思っている。

だがこの卦(Hexagram)が出ている。

これはすなわち、

・彼女は追い求めている方向性が間違っている。

彼女は結婚相手に対する理想が高いのだろうか?

それもあるかもしれない。

彼女は「お見合い」を通して同世代の結婚相手を探している。

だが、結婚適齢期を過ぎた独身女性に紹介される男はなにかと問題がある場合が多い。

一度結婚に失敗して離婚した男性が紹介されるならば、まだマシなほうだ。

40代になるまで一度も女性と交際したことがない男性とか、女性にはまるで関心がない男性とか、では、男として問題があるだろう。

「お見合い」に現れる男性には、このタイプが非常に多い。

この女性は職場でもいろんな男性を見てきている。

彼女は男を見る目がある。

そんな彼女が「お見合い」でいい男性と知り合えるだろうか?

つまり、

・彼女はお見合いをしても、いい相手は現れない。

ということは、現在、彼女が結婚相手を探している方向は、無意味であるということを易経は彼女に告げているのである。

婚期を焦っての婚活。だが、うまくいくケースは非常に少ない。
婚期を焦っての婚活。だが、うまくいくケースは非常に少ない。



母親に関する問題

私にはもう一つ、気になった点があった。

彼女の母親のことである。

父親は彼女がまだ二十代のころに亡くなっている。

私は彼女に、母親との関係や、将来的にどうしたいのかを尋ねた。

彼女は次のように言った。

「私と母とは、仲が良いのですが、現在私は仕事が忙しいので一人暮らしです。

なるべく週末には実家に帰るようにしています。

母が最近は歳をとってきています。

私はできれば今の仕事を辞めて、実家に戻りたいと思っています。

なので、できることなら実家の近くで仕事をしている男性と結婚出来ればと思うんです。」

高齢の親の介護は、少子化社会では大きな問題となっている。
高齢の親の介護は、少子化社会では大きな問題となっている。

そうなってくると、ますますお見合いをして結婚相手を探しても難しいだろう。

彼女は、母親のことも含めて明確な希望がある。

だが、条件がかなり絞られてくる。

「あなたの願いは大いにかなう。従順に一歩退くならばいい状況がくる。退かなければ逆に災いがある。進もうとすれば不利となる。」

まさに、今のやり方で彼女が結婚相手を探しても、かなり難しい。

では、彼女はどうすべきなのか。

「ひと言アドバイス」には、こうある。

猫は犬にはなれないし、魚は山には住めませんから、あなたは不自然なことはしたくてもできません。

これはあなたの人生にもあてはまります。

不本意でもこうするしかない、というシチュエーションは多いのです。

私たちは冷静にバランス感覚をもって状況を観察し、全体の流れに逆らわない方向を選択するべきです。

母親は、彼女がお見合いをしたりしていることを知っているのか?と私は彼女に尋ねた。

「私は自分の母には、何も言っていません。

私が独身でいることを母は心配してはいると思います。

私は自分の母に余計な心配はかけたくないのです。」

彼女自身が、母親にこういうことを相談したりするのは恥ずかしいというのもあるのかもしれない。

だが、全体が見えてきた。

あなたならば、この易経占いの結果を踏まえて、彼女にはどう伝えるだろうか?


解釈

結婚するということは、男女それぞれが気に入った相手を選択するということである。

理想論としては、互いに相思相愛が望ましい。

相手を好きになり、子供を授かりたい、と思うから結婚する。

それが、結婚の本来の原則だ。

異性を好きになる、ということは、実はとても大事なことなのだ。

自分が相手を好きでも、相手にその気がない場合もある。

でも、相手に気に入ってもらえるためには、どうしたらいいのだろう?と考える中で、私たちは気遣いを学ぶ。

現代はさまざまな価値観があることは承知している。

恋愛感情がまったく持てないという人もいるだろう。

それもまたいいと思う。

ここで私が言っていることは、現代日本において結婚を望む場合の話だ。

自由恋愛による結婚が標準化している現代日本。自分で相手を見つけられない男女は非常に多い。お見合いをしたとしても、無条件で相手を受け入れる時代ではない。お見合い自体が無意味になってきている。
自由恋愛による結婚が標準化している現代日本。自分で相手を見つけられない男女は非常に多い。お見合いをしたとしても、無条件で相手を受け入れる時代ではない。お見合い自体が無意味になってきている。

昔の日本は、見合い結婚が多数を占めていた時代が長かった。

私の親も含めて、恋愛経験なしで見合い結婚している人が多数派だったのだ。

それが自由恋愛で結婚相手を見つけるというパラダイムに変わったのである。

このパラダイムの中では、異性を好きになる、という動機がまず最初になければ結婚は成立しない。

彼女の場合に話を戻すと、彼女はまさに古い時代のパラダイムで結婚相手を見つけようとしている。

しかし今の時代は自由恋愛をできる人は30歳前後までで結婚してしまう。

年齢が上がるほど、見合いで紹介される相手は、問題があって結婚できないでいる人になる。

結婚するだけが目標ならば、相手がどうであれ結婚はできる。

だが、彼女は自分に釣り合う男性を探している。

頭もよく、仕事もできる彼女にしてみれば、見合いで出てくる男性は対象外であろう。

さらに母親に関する問題もあるから、彼女の希望に合致した相手と見合いで知り合える確率はさらに低くなる。

彼女は、結婚適齢期が過ぎていることに焦っていて、例えるならば鯉を釣るために蛙しかいない池で釣りをしている。

だから、この卦(Hexagram)が出ている。


私の判断

私は彼女に次のように伝えた。

「あなたに、結婚したい気持ちがあるのはわかります。

ただし、ご自分で気づいておられるかどうかはわからないのだけれども、あなたが求めている相手の条件はかなり限られてきますよね。

まずは、あなたは職場でもいろんな男性を見てきているから、どうしても男性に対する条件は高くなってしまいます。

でも、お見合いに出てくる男性というのは、あなたと同じ世代だと、みんな問題がある男性ばかりです。

あなたの希望に合う男性が出てくるのはかなり難しいでしょう。

さらに、あなたのお母さんの問題も影響してきます。

あなたはあなたのお母さんを世話したいと考えているから、ご実家の近くの男性がご希望なのですよね?

でもそれだとさらにあなたが希望する男性が現れるのは、難しいのではないでしょうか。

私が思うに、あなたには、お母さんの問題のほうが今現在は大切に見えます。

実はお母さんの問題と、あなたの結婚の問題は別々の問題です。

これらがくっついてしまっていることが大きな問題です。

切り離して、一つずつ整理して解決していくべきです。

あなたはお母さんを世話したい、とおっしゃっていましたが、それならばまずあなたがお母さんの近くで仕事をするようにしてみたら?

今の会社の営業所もご実家の方にありますよね?

あなたのお母さんのことが結婚にあたっても条件になるのなら、まずは仕事の環境をご実家の近くに移してみたら?

そのうえで結婚については、焦らず、あなたのお母さんとも相談してみたらいかがでしょうか。

今回の易経占いでは、一歩退くことで幸運が来ます。

それは、あなたご自身が本当に大事に思うことに忠実になるということです。

優先順位の高い順番で考えたらいいと思いますよ。

お見合いについては、今のようにあなたが焦ってお見合いをしていても、いい結果が出るとは思えません。

むしろ、ご実家の近くに引っ越したうえで、親戚にあなたの結婚相手探しをお願いするとか、もう少し現実的に考えてみたらどうですか?

あなたは、賢くて女性らしさを持っています。

焦ってお見合いしてあなた自身を安売りするようなことはしない方がいいですよ。

焦る気持ちを捨てて、一歩後ろに下がってみたほうがいいのではないでしょうか?

そのほうがあなたらしいのではないですか?」

こういう時は、一歩後ろに下がって、冷静に考えてみることが大切だ。それは自分らしさを見つめ直すことでもある。
こういう時は、一歩後ろに下がって、冷静に考えてみることが大切だ。それは自分らしさを見つめ直すことでもある。

彼女は、ため息をついた。

そしてこう言った。

「言われるまでもなく、そうですね。

考えてみたら、私、焦っていますね。

私の年齢のこともあるし、母のこともあるから、どうしても実家の近くに勤務する人を探さなきゃ、と焦ってしまっていました。

でもそんなに都合のいい人なんていないですよね。

とりあえず、母のことは私しか面倒を見れないんです。

結婚はあきらめたくないですが、まずは優先順位は母のことからですね。」


結末

このカウンセリングから一年ほど経過したある日。

私は街中で彼女にばったり遭遇した。

その後はどうですか?

彼女は、会社にお願いして、実家に近い営業所に異動した。

仕事で遅くなる日が多いので、職場の近くにアパートを借りている。

しかし、実家が大幅に近くなったので、毎週母親のところに行けるようになった。

そして、職場の男性と現在交際中だ、と彼女は言った。

「その人と私は、最初は職場の同僚でした。

私は最初は彼に対して恋愛感情はなかったんですけど。

でも、私たちは二人で食事に行ったりするようになって。

結婚?

うーん、わかんないなあ!

私も彼も若くはないですから。

でも、そういう話になっていくようだったら、前向きに考えたいと思います。」

それでいいのですよ!

お見合いで不本意な男性と知り合って、不本意な結婚をするよりもよほど良い。

あなたらしいじゃないですか。

それに、あなたはお母さんとも以前よりは身近に接することができているのだし。

相手の男性とは、結婚まで至るかはまだわからないにしろ、少なくとも彼女は今は孤独ではない。いい方向に向かっていくのではないだろうか。
相手の男性とは、結婚まで至るかはまだわからないにしろ、少なくとも彼女は今は孤独ではない。いい方向に向かっていくのではないだろうか。



自分に正直に生きることが重要

无妄(むぼう="Without Embroiling")とは、自分本来の生き方をすることだ。

現代は功利主義が主流だから、私たちはとかく目標を設定して、上昇しなければならないと考えがちだ。

でも、自分らしくない目標を立てて努力することは無意味である。

東洋的な思想は、自分らしくない上昇志向を否定する。

私たちはそれぞれが個性を持っている。

私たちは能力もそれぞれが異なる。

中にはプロ野球選手になれる人もいるだろうが、プロ野球選手になれなくてもなにも問題はない。

事業成功者になる人もいる。

だが、小さい仕事をしていても幸福な人もいる。

結婚適齢期を過ぎたからといって、無理に結婚をする必要もない。

人間は自分らしく生きるのが一番重要なのだ。

迷いから抜け出すためには、自分らしく生きることだ。すべてはそこから始まる。
迷いから抜け出すためには、自分らしく生きることだ。すべてはそこから始まる。

そのためには、自分の本当の願望を知り、自分の正しい状況を知る必要がある。

无妄(むぼう="Without Embroiling")とはつまり、自分らしさを見つめ直すという意味である。

自分らしさを基準とした場合、目標達成のためにまい進するよりも一歩退くことも時には重要だ。

私たちは、自分以外の者にはなれない。

現代社会は、日本に限らず功利主義で数字を追求する。

しかし基準を自分らしさに求めなさい、と易経は言っているのである。

自分らしさを基準にすると、進むべき道は決まってくる。

それは壮大な目標とは異なるかもしれない。

だが結局、人は自分らしく生きることしかできない。

そこに人生の本質はあるのだ。

それが无妄(むぼう="Without Embroiling")の意味である。


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