易経の歴史1 オリジナルな易経は、どんな形だった?

易経の原型は、どんなものだったのだろうか?

一般的に考えられる易経の発達過程に加え、私の見解を書く。

また、このブログのスタイルについても書く。

易経のオリジナルな部分

易経のオリジナルな部分は、卦辞(Explanation of the Hexagram)と爻辞(Explanation of the Lines)である。

最初は、この二つが64卦(Hexagrams)に対してまとめられた。

wikipediaに掲載されている「I-ching」の写真。
wikipediaに掲載されている「I-ching」の写真。元々の易経は、卦辞(Explanation of the Hexagrams)と爻辞(Explanation of the Lines)だけだった。しかし、現代では解説の方が圧倒的に多い。

今回、私は一通り現代的に大意訳を書いてみて思う。

卦辞(Explanation of the Hexagrams)と爻辞(Explanation of the Lines)は、起源は非常に古く、しかも一個人が書いたものではない。

これらの原文は漢字(Chinese characters)表記で、古代中国語が書かれている。

これらの内容は、単なるメモ的なものと、物語性があるものとが混在している。

そこからは、様々なテキストをまとめた形跡が窺われる。

古代の中国語であるため、文法も現代中国語とは異なっていて、わかりづらい。

占いテキストとしての易経は、少なくとも殷王朝の時代にすでに64卦(Hexagrams)の形で存在していた。

この64卦(Hexagrams)と爻(Lines)の解釈については、小国ごとに言い伝えられてきたテキストが複数存在していたのではないかと思われる。

テキストが複数存在した形跡があることは、おそらく、それぞれの国に易経を扱う専門家がいたのだ。

それらの専門家の中に、天才的なセンスを持った人物が数名存在したのだと思う。

彼らはそれぞれ、卦(Hexagrams)と爻(Lines)に対する独自の解釈をし、彼らの解釈は口頭で弟子たちに伝えられていたのだろう。

やがて漢字(Chinese characters)が使われるようになった時、それぞれの天才の流派ごとに、秘伝として記録されたのだと思われる。

漢字(Chinese characters)の成立は、考古学的には殷王朝後半と言われている。

周の文王が、伝説では卦辞(Explanation of the Hexagram)と爻辞(Explanation of the Lines)の作者と伝えられている。

が、文王がこれらを書いたというよりも、文王がいた時期に、それまで口伝で伝えられてきた易経の解釈が、文字化されていったということなのだと思う。

文王の子孫たちの時代になり、周王朝が成立した時、国家事業として複数の流派に伝えられていた易経の解釈が集められ、そして取捨選択が行われたのではないかと私は考える。

そして、卦(Hexagrams)と爻(Lines)に対する最も適切と思われるものが選ばれてまとめられた。

卦辞(Explanation of the Hexagram)と爻辞(Explanation of the Lines)が、様々な文体で書かれているのはそのためだと思われる。

周の時代に最初の大規模な編纂が行われたから、易経は「周易」と呼ばれる。

ただし、この大がかりな編集は記録も残っていない。

周王朝の全盛期であっただろうが、年代も不明である。

が、おそらくBC1000年以降である。


やがて、いろいろな注釈が作られた

周王朝の時代に、現代に伝わる卦辞(Explanation of the Hexagram)と爻辞(Explanation of the Lines)が成立したが、時代が変わるにつれておそらくであるが言語も変化した。

春秋時代、戦国時代に至り、易経の卦辞(Explanation of the Hexagram)と爻辞(Explanation of the Lines)の意味は、次第に本来の意味がわからなくなっていった時代があったと思われる。

これは、卦辞(Explanation of the Hexagram)と爻辞(Explanation of the Lines)の文体に統一性が希薄であることも影響していると思う。

さらに、占いに使われる象徴としての卦辞(Explanation of the Hexagram)と爻辞(Explanation of the Lines)の性質が、解釈を難しくしていた。

卦辞(Explanation of the Hexagram)と爻辞(Explanation of the Lines)は、基本的に簡潔に書かれていて、占うものの状況に応じて想像力を喚起させる表現が多い。

占いに使用される象徴は、意味が固定されては不都合なのだ。

しかし、次第に本来の意味がわからなくなっていった。

そこで、卦辞(Explanation of the Hexagram)と爻辞(Explanation of the Lines)に関する注釈が必要になった。

かつては卦(Hexagrams)と爻(Lines)の解釈が複数存在したように、今度は注釈が複数登場していったのだと思われる。


卦辞(Explanation of the Hexagram)と爻辞(Explanation of the Lines)を解釈するにあたっては、そのための根拠が必要となった。

私の個人的な考えであるが、八卦(The Eight Trigrams)は、この時点で必要になったのではないか。

それ以前からあったのかもしれないが、卦辞(Explanation of the Hexagram)と爻辞(Explanation of the Lines)に対する注釈を作るにあたって、八卦(The Eight Trigrams)の研究が盛んになったのではないか。

そして、卦辞(Explanation of the Hexagram)と爻辞(Explanation of the Lines)に関する様々な注釈が生まれた。


易経の注釈の歴史

wikipedelia「易経」に、こんなことが載っている。

1973年、馬王堆漢墓で発見された帛書『周易』写本に「十翼」は無かった。付属文書は二三子問・繋辞・易之義・要・繆和・昭力の六篇で構成されていた。

馬王堆漢墓は、前漢の時代の遺跡であるが、ここで発見された易経では、注釈が現代の「十翼」と呼ばれるものとは別バージョンだった。

ということは、現代に伝わる「十翼」以外にも、卦辞(Explanation of the Hexagram)と爻辞(Explanation of the Lines)の注釈はいろいろと存在したことになる。

では、現代に伝わる「十翼」と呼ばれる易経の注釈が定番となったのは、いつの話なのだろう。

「十翼」は、ひと言で言えば、儒教が編纂した易経に関する解釈書である。

易経の作者の一人が孔子と伝承されている理由は、儒教の教団がある時期、大規模に易経の注釈を編纂したからだ。

儒教の編纂した注釈は、他にも様々に存在した解釈書の中から選別されてまとめられたのだと思う。

だが、儒教もまた易経解釈の一つの流派に過ぎない。

だから、少なくとも前漢の時期には、馬王堆漢墓に見られるように、別の流派も存在したのだ。

やがて儒教が中華世界でアカデミックな権威となる。

儒教が制定した四書五経が、文化人や官僚の必須教養となったとき、儒教が編纂した「十翼」が易経のスタンダードな解釈書となって定着した。

そして時代と共に、それ以外のものは失われてしまった。


「十翼」の構成

現代に残る易経の解釈書である「十翼」は、次のようなものである。

「彖伝(Tuàn chuán)上・下」

卦辞(Explanation of the Hexagram)の注釈

「象伝(Xiàng chuán)上・下」

各卦(Hexagrams)の象形の意味についての短い解説と、その爻(Explanation of the Lines)辞の注釈

「繋辞伝(Xì cí chuán)上・下」

易経の成り立ち、易経の思想、占いの方式、など

「文言伝(Wényán chuán)」

乾(Force)および坤(Field)についての詳しい解説

「説卦伝(Shuō guà chuán)」

八卦(The Eight Trigrams)の概念、森羅万象をこの八種の象徴に分類する理由

「序卦伝(Xù guà chuán)」

64卦(Hexagrams)の並び方の理由

「雑卦伝(Zá guà chuán)」

占いにあたっての、ちょっとしたヒント


現代の易経では、これらを各卦(Hexagrams)ごとにまとめている。

日本の岩波文庫で出版されている「易経」では、このようなスタイルである。

岩波文庫で出版されている「易経」
岩波文庫で出版されている「易経」1

岩波文庫で出版されている「易経」2
岩波文庫で出版されている「易経」2
これが伝統的な「易経」の形式である。さらに学術的な解説や、現代日本語訳がこの後に続く。


基本的に、現代の易経は、次のような構成だ。

<現代の易経の構成>

卦(Hexagram)のタイトル

卦辞(Explanation of the Hexagram)

彖伝(Tuàn chuán)

象伝(Xiàng chuán)→「ひと言アドバイス」に該当する。

六つの爻(Lines)

爻辞(Explanation of the Lines)

象伝(Xiàng chuán)→ここでは、爻辞(Explanation of the Lines)の注釈となる。

この後に、学術的な見解や現代日本語訳などが追加される。


伝統的な易経の問題点

私は長年、個人的に易経を研究してきた。

自分でも様々なことを易経で占ってみた。

私が経験者として言わせてもらうならば、易経占いは非常に面倒くさいものだった。

なぜかというと、卦辞(Explanation of the Hexagram)と爻辞(Explanation of the Lines)は、本来のオリジナルな易経であり、象徴性も高い。

しかし、現代人では状況がわからない記述も多い。

そこに、彖伝(Tuàn chuán)や象伝(Xiàng chuán)が併記されるのだが、これは儒教哲学に基づいたもので、道徳論が入っており、説教がましい。

もちろん、これらの解説がなければ、卦辞(Explanation of the Hexagram)と爻辞(Explanation of the Lines)を現代人が理解するのは困難だ。

しかし、易経では、本体と注釈が、明らかに立場が異なっている。

これが現代人が易経を読むのを困難にしているのではないだろうか。

また、原文は古代中国語、それに対して日本では日本語古文の対照訳がついているが、現代の日本人は日本語古文をほぼ読めない。

そこで、日本で出版されている易経では、一応、現代語訳もつけられている。

が、それがあっても一般的な読者には難解で、本来は易経は占いの書だというのに、これでは多くの人が易経を占いに使えない。


このブログでの私の姿勢

今回、このブログを始めるにあたって、私は一般的な人が実際に易経占いができるようにしようと思った。

なので、当初から自分なりの易経の大意訳を書くことを考えていた。

しかし、現代の一般的な若者が読んで理解できるものにするには、私はどうすればいいのだろう?

いろいろと考えたのだが、私は易経のオリジナルな部分を中心に、私なりの解説を書くことにした。

それは卦辞(Explanation of the Hexagram)と爻辞(Explanation of the Lines)である。

本来の易経は、卦辞(Explanation of the Hexagram)と爻辞(Explanation of the Lines)を意味した。

だから、私の解説ではこれらを中心にしようと思った。

「十翼」については、内容を反映させるだけにとどめた。

こうしたスタイルのほうが、使いやすいだろう。

だから、私の作った易経64卦(Hexagrams)に関する解説ページでは、卦辞(Explanation of the Hexagram)と爻辞(Explanation of the Lines)が中心となる。

伝統的な形式には一切こだわらないことにした。

このブログの卦(Hexagram)の解説ページ。伝統的なスタイルでは書いていない。
このブログの卦(Hexagram)の解説ページ。伝統的なスタイルでは書いていない。各爻(Lines)を示す漢数字(Chinese numeral)も、アラビア数字に変更している。

このブログにおける解説ページは「目次」を付けてある。目次だけでも占いができるようにしてある。
このブログにおける解説ページは「目次」を付けてある。目次だけでもあなたは占いの結果を判断ができる。

このブログの解説ページは彖伝(Tuàn chuán)、象伝(Xiàng chuán)は併記していない。しかし、それらの内容は解説の中に反映させている。オリジナルな部分の象徴性を重視している。
このブログの解説ページは彖伝(Tuàn chuán)、象伝(Xiàng chuán)は併記していない。しかし、それらの内容は解説の中に反映させている。オリジナルな部分の象徴性を重視している。

「ひと言アドバイス」の項目は、象伝(Xiàng chuán)を反映させたものである。
「ひと言アドバイス」の項目は、象伝(Xiàng chuán)を反映させたものである。

以上の理由から、このブログでは岩波文庫のようなアカデミックなスタイルはとっていない。

彖伝(Tuàn chuán)や象伝(Xiàng chuán)の内容は、私が書いた解説の中に反映させてある。

彖伝(Tuàn chuán)や象伝(Xiàng chuán)そのものの翻訳は、割愛した。

しかし伝統的な易経の解釈には理由があるので、私は形式上は彖伝(Tuàn chuán)や象伝(Xiàng chuán)は割愛しているが、無視はしていない。

ただ、簡略化した方が現代の読者には使いやすいと思うからである。

私はアカデミックで伝統的な解釈を否定しない。

日本では多くの先生方が易経の研究を完成させている。

それらは占いの手段として易経を深く考える際に、非常に重要である。

だが私は学者ではない。

私は実際に日常のことを占う目的で易経を使うならばどうするか、という視点で易経を考えている。

今回のブログでの易経解説は、実際の占いの視点で書いているので、それなりに使いやすいものにはなってきつつある。

しかし、まだ改善すべき箇所はたくさんある。

なので、今後も修正は続けていこうと思っている。


最後に。

日本では、立派な学者の方が、アカデミックな解説を各種執筆しておられる。

より専門的に易経を学びたい方は、そうした書籍を読んでみていただきたい。

が、スマホを片手に、あなたが日常のことを占うのであれば、このブログの易経解説は悪くない選択肢だと思う。




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