易経占い入門講座 その5 占った内容をどのように読むか?実例編!「変爻(Change)」が出ない場合

前回は、 ”易経占い入門講座 その4 占った内容をどのように読むか?実例編!「変爻(Change)」が出ている場合”についてお話ししました。

老陰・老陽は出ない場合もあります。

今回は、「変爻(Change)」が出ない場合です。

「変爻(Change)」が出ない場合

易経占いにおいては、「変爻(Change)」が出ない場合については、卦(Hexagram)の全体解説である「卦辞(Explanation of the Hexagram)」から判断をする、というのが原則です。

それにあたっては、「ひと言アドバイス(象)」も十分に参考として吟味するべきです。


実例

それでは、今回も実例で考えてみましょう。

実例として、ある女性からの相談を取り上げます。

糖尿病の影響で、疲れやすい。しかしまだやらねば、と気ばかり焦る。
この女性は糖尿病の影響で、疲れやすい。しかしまだ仕事をしなければ、と気ばかり焦る。

「最近、いろいろと調子が悪くて悩んでいます。

数年前から糖尿病の診断を受けていて、ヘモグロビンの数値が高く、薬を飲んでいます。

体がだるいことが多く、すぐに疲れてしまいます。

仕事を辞めました。

私は夫とは仲はいいのですが、私の夫は人を世話することが好きな人です。

あれはどうなっている?これはどうなっている?と彼が言ってくるのですが、私は体調の関係もあって対応しきれなくなりつつあります。

子供たちの心配もあります。

まだ60歳前ですから、仕事もしたいと思っているのですけれど体が思うように動きません。

休んでいれば体は楽ですが、今、私は休んでいていいものか?と不安になったりします。

少し無理をしてでも仕事を再開した方がいいのでしょうか?」

この女性に、易経占いを行ったところ、彼女は次のような結果を出しました。


小過("Small Exceeding")

⚋ 6th→上6(Upper6)
⚋ 5th→65
⚊ 4th→94
⚊ 3rd→93
⚋ 2nd→62
⚋ 1st→初6(First6)

さて、みなさんはこれをどう解釈しますか?

練習してみましょう。

まずは、あなたが占い師になったつもりで、「基本編1>易経64卦対照表」を開いてみてください。

そして「小過("Small Exceeding")」の解説ページを探してみましょう。

やってみてください。

「小過("Small Exceeding")」の解説ページリンクはここに貼っておきます。

このブログサイトを使えば、易経で占ったものをご自分で確認して占うことができます。
基本編1>易経64卦対照表から、上卦(Upper trigram)、下卦(Lower trigram)を照合し、占った卦(Hexagram)がどれに該当するかを特定しよう。該当する卦(Hexagram)クリックすれば、その卦(Hexagram)の解説ページが開きます。スマホでもかんたんに照合できます。


変爻(Change)が出ない場合は「卦辞(かじ=Explanation of the Hexagram)」から判断

今回は変爻(Change)が出ていません。

この卦(Hexagram)、「小過(しょうか="Small Exceeding")」は、「あなたは少し無理しているから、行動は控えめにしなさい」という原則的な意味を持っています。

「変爻(へんこう)」が出ない場合は、全体判断を示す「卦辞(かじ)」から判断する。
「変爻(Change)」が出ない場合は、全体判断を示す「卦辞(Explanation of the Hexagram)」から判断する。

変爻(Change)がないので、今回、私たちは全体の状況説明に当たる「卦辞(Explanation of the Hexagram)」を丹念に見ていきます。

そこにはこう書かれています。

「あなたの希望はかなう。この時期にふさわしい正しさで行動するならば恩恵をうけることができる。今、あなたは小さい決断ならできるが、大きい決断はできない。鳥が飛んできて、啼いて語りかける。”上ろうとするのはよくないよ、下るのが今はいい”と。その神託にしたがうならば、大吉、大いにいいことがある。」

解説も読んでみましょう。

このようなことが書かれています。

この卦(Hexagram)の形は、鳥が羽を広げたような形です。

卦辞(Explanation of the Hexagram)では、鳥が飛んできて、忠告します。

鳥が言うには、「上に向かおうとするのはよくないよ、下に降りるほうがいい」。

あなたは無理がかかることはしないで、楽に無理なくできることをしなさい、と鳥は言っています。

この時期は、あなたが置かれた状況とあなたのパワーはミスマッチしています。なにかを積極的にやるにはパワーは足らず、やりすぎれば必ずすぐに自分にはねかえってきて、ダメージを受けてしまう時期なのです。

だから、無理せず、楽にやれる方向性を考えるべきです。

ある種の神託です。

そして、それに従うならば、「大吉」となります。

易経占いでは、あなたが真面目になにかを易経に問うとき、不思議とその状況を暗示させるような意味深長な結果が出ます。

今回も、非常に意味深長なことが出てきています。

ここから、私たちが読み取れることは、

・今現在、占い手はなにかを積極的に頑張る時期ではない

・彼女は目標設定をさげるべきである。無理がないやり方にする

・無理なくやることで、彼女は希望する状況にいたることができる


また、次のような説明も注目です。

この卦(Hexagram)は、「陰」が上側と下側を占めていて、二か所の「中心」である二番目と五番目の位置にはいずれも「陰」が入っています。

本来は、これらの位置に「陽」が入るならば、この卦(Hexagram)は積極的性格となり、行動ができるようなります。しかしここでは、中心が二つとも「陰」です。<䷽ 小過(しょうか="Small Exceeding")>が象徴するのは従順でおとなしすぎる人物、積極的に行動ができません。

「陽」は二つあります。しかし、93は「中」の位置にないので、公平で客観的な判断ができません。また、94は動き回りたい性格の「陽」が四番目の「陰位」にいて、ミスマッチしています。94は静かにしなければならぬのに動こうとします。二つとも状況に適応できていません。

なので、今の状況としては、小さい事柄はやっていいけど、なにか大きな決断を要するようなことはしてはなりません。

これはつまり、占い手自身の性格や、あと旦那さんとの状況を暗示しているようにも見えます。

つまり、

・もともと積極的に自分から動くのが得意な方ではない?

・旦那さんは、今の状況に対してミスマッチして動きたがるが、現状では占い手である奥さんは対応が難しい?

・占い手だけでなく、家族も含めて行動範囲を狭くして無理が起こらないようにするほうがよい?


「ひと言アドバイス(象)」もよく参照しよう

変爻(Change)があろうが、あるまいが、「ひと言アドバイス(象)」は今の状況に対しての重要な指針が含まれています。

「ひと言アドバイス(象)」は、変爻(へんこう)の有無にかかわらず参考にすべき部分である。
「ひと言アドバイス(象)」は、変爻(Change)の有無にかかわらず参考にすべき部分である。

ここでは、

なので、この卦(Hexagram)が出た場合は、あなたはいつもよりなにごとも慎重すぎるくらいでやるべきです。

「象」には次のように書かれています。「あなたは行動するときは少し慎重すぎるくらいに、葬式に出席するときは少し悲しみすぎるくらいで、また買い物するときは少し倹約しすぎるくらいに」。

このアドバイスは、そのまま受け取っていいでしょう。

彼女の話から考えるならば、

・なにか行動を起こす場合、それをするかしないかを慎重に判断

・行動に対しては家族全体として思い付きや気分で走らないようにする


占いの判断例

さて、もし私がこの占い手に対して判断を述べるとすれば、次のようになるでしょうか。

占い判断は、卦辞(かじ)、解説、ひと言アドバイスそれぞれから得られることを、占い手の状況とかみ合わせて総合的に判断する。
占いの判断は、卦辞(Explanation of the Hexagram)、解説、ひと言アドバイスそれぞれから得られることを、占い手の状況とかみ合わせて総合的に判断する。

「まず、あなたのご体調はお話の通り、決して良くはなさそうですね。

今の時期は、ご無理は禁物です。

どうもあなたご自身は、今のままではいけないと焦ってしまっているように見受けられますが、その焦る気持ちを押さえないと、焦って動いても体がついていかないでしょう。

焦って動いても結局は対応できなくなってしまいます。

お仕事に関しても、これまでと同じようにやれると考えない方がいいでしょう。

無理をすれば、必ず体にはね返り、いいことになりません。

少し、今、あなたが考える線よりもあらゆることにおいて目標は落として、無理なく楽にできるようなやり方ですべてを考えるといいと思います。

また、今の状況は、あなたのご家族の協力も必要です。

ご主人はいい方で、面倒見もよろしいのでしょうが、現状ですとあなたがご主人の行動についていけません。

あなたご自身がサポートできないことについては、ご主人には受けないようにしてもらわないとなりませんし、お子さんたちにもあなたのご体調をよく考えてもらい、協力してもらわないとなりませんね。

なにごとも、いい意味で消極的にされたほうがいいです。

無理をしようとすればろくなことにならないが、少し目標を落として無理なくできることをやっていけばいい方向に行く、と占いでは出ていますよ」


「今の段階での判断」は、行動でまた変化する

前回もお伝えしておりましたが、易経の結果というのはあくまでも「占い手の現状の投影」です。

彼女は、ここでは「今は積極的に行動してはならない」という易経からの判断が出てはいます。

が、彼女がこれに従えば、状況はまた変化していきます。

これはつまり、


現状+自由意思に基づく行動→変化した状況→さまざまな未来の可能性


ということです。

易占いの結果は、予言ではない。現在の在り方の反映である。未来はこれを踏まえて自由意思で行動した先にある。
易経占いの結果は、予言ではない。現在のあなたの在り方の反映である。未来は易経の意見を聞き入れたうえで、あなたが自由意思で行動した先にある。

今回の実例において、占い手に対し易経からは「積極的に行動しないほうがいい」と出てはいますが、これはまた彼女の行動次第で変化していきます。

易経占いが「予言」ではない、ということは、考え方として私たちの未来というものは無数の可能性があることを意味します。

易経では、占いとは「現状を変えていく」ためのものです。

易経の意味が、「The Book of Change(変化の書)」であるのは、適切な訳だと思います。

私はあくまでも以上の前提でこのブログは執筆しています。


「卦辞(Explanation of the Hexagram)」と「爻辞(Explanation of the Lines)」の違い

「卦辞(Explanation of the Hexagram)」が、占い手の置かれている全体状況を暗示させる内容で書かれています。

「爻辞(Explanation of the Lines)」のほうは踏み込んだ具体状況が書かれています。

卦辞(かじ)は全体状況、爻辞(こうじ)はそこから一歩進んだ状況を暗示する。
「卦辞(Explanation of the Hexagram)」は全体状況、「爻辞(Explanation of the Lines)」はそこから一歩進んだ状況を暗示する。

この二つは、関連し合っています。

なので「変爻(Change)」が出ている場合は、今の全体状況を考えるために「卦辞(Explanation of the Hexagram)」も読んでみたほうがいいのです。

しかし、「変爻(Change)」が出ない場合は、「卦辞(Explanation of the Hexagram)」だけを参照することになります。

この場合は、「爻辞(Explanation of the Lines)」は読みません。

六つある「爻辞(Explanation of the Lines)」は、それぞれがまったく異なることが書かれているので、参考にしてみようがないのです。

言い換えるならば、「変爻(Change)」が出ていない場合は、まだ状況の大枠の範囲内で占い手の現状は推移しています。

それが今後、どう具体化していくかはまだ未確定、と言うこともできると思います。


「変爻(Change)」が複数の場合のいろいろな考え方

「変爻(Change)」が二個以上、複数ある場合は、占い手がなにを問いたいのかが定まっておらず、易経としては回答ができない、と考えたほうが適切です。

実際、「変爻(Change)」が複数ある場合は、それぞれの内容は正反対だったりします。

だから、判断のしようがありません。

筆者の個人的見解では、変爻が複数出るのは、心の状況が波立ち、問うことが定まっていないか適切ではない場合が多い。筆者としては複数変爻は、占いのやり直しを推奨している。
筆者の個人的見解では、変爻(Change)が複数出るのは、心の状況が波立ち、問うことが定まっていないか適切ではない場合が多い。筆者としてはこの場合は、占いのやり直しを推奨している。

しかし、伝統的な易経学では、複数の変爻(Change)が出る場合は、今回のように「卦辞(Explanation of the Hexagram)」により判断せよ、という見方もあります。

それは、全体状況から起こりうることが複数考えられるから、という見解に基づくものだと理解しますが、しかし私の経験上ではやはり「ずれ」がけっこうあることが多いです。

なので、私流としましては、「変爻(Change)」が複数の場合は、「やり直し」として占いを考えます。

実際にそうしたほうがあなたはなにに悩んでいるのかを明確に見つめることができます。

さらに結果がはっきりと出るように経験上は感じられるからです。

しかし、このあたりは見解はいろいろあり、私はあくまで経験上で複数の変爻(Change)については占いをやり直す、という立場をとっていることをここでお断りしておきます。


さて、ここまでで入門講座は終了です。

また、必要に応じて入門に関することは補足していくつもりです。


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